ATOLL 『ROCK PUZZLE』:ポップさが光るプログレッシブ・ロックの佳作

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評価:4(5点満点中)

総評

フランスのプログレッシブ・ロックバンドATOLL、1979年の作品。

代表作『組曲夢魔」』と比較すると、本作はアルバムを通じてポップさが際立つ作品となっている。どの曲もバンドの特徴であるホーン、ストリングを交えた綿密なアンサンブルと、本作の特色でもあるポップで明快なメロディーラインが調和した、聞きやすい仕上がりとなっています。

組曲夢魔」』は大作故に、疲れているときや気分の乗らない時に聴く気にはなりにくいですが、本作はBGMとしていつでも気軽に流しておくことができるイージーリスニングな作品ですね。

このバンドを知ったのは15年程前に、当時の会社の上司からだったことを思い出します。当時私はまだ入社してそれほど立っていない若手の一人でした。大学時代からプログレッシブ・ロックを愛好していましたが、このジャンルは当時すでに衰退著しく、同僚にも同じ趣味の人間は一人もいませんでした。むしろジャンルとして盛んだった年代に重なる一回り以上年上の方々に愛好の士が残っており、若手に今どきプログレ好きな変わり者がいると聞いた方から職場の飲み会で「君プログレ好きなんだって?」とよく話しかけられました。当時若輩の私がプログレが縁となり、結構な上位の役職者の方とも知り合うことになり、よく飲みに行ったりライブに行くなどしていました。プログレのファンはたいてい自分の趣味について語るのが大好きなのですが、周りにそれができる人が少なく、寂しい思いをしているので、同好の士を目ざとく見つける嗅覚の持ち主が多いのです(笑)。

本作もそんな縁で知り合った方から教えてもらった作品です。

ちなみに本作にはフランス語のオリジナル・バージョンに加えてジョン・ウェットンがボーカルを担当する英語バージョンが含まれています。ジョン・ウェットンのボーカルは好きな部類に入るのですが、本作のポップなリズムには少々重すぎる印象がありますね。英語の歌詞もオリジナルのフランス語に比べると韻が踏めておらず、リズムを乱している気がするので、話のネタには良いですがやはりオリジナルのほうが優れています。

BEST TUNEは4曲目の"Smart Kitschy"。本作の雰囲気を最もよく表した、アップテンポなナンバーです。