M☆A☆S☆H :現在の視点で見ると少々厳しい...

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評価:2(5点満点中) 

総評

映画に限らず一般に娯楽や芸術というものにはどうしても「同時代性」の呪縛があるように思います。つまりその作品が発表された時代の文化、風俗、思想諸々が反映されているため、それが善かれ悪しかれ後年の体験に影響を及ぼすということです。同時代性の強い作品ほど、その作品が発表された時代の中でこそ、その体験が最大化し、異なる世代ではその最大化された体験を、当時ほどには理解できないということはあるのではないかと思います。

名作と呼ばれ、時代を経てもなお愛好される作品というものは、ある程度この同時代性の頸木を脱して、当時の空気を知らなくとも問題なく楽しめる普遍性を得ているものだと思うのですが、1970年公開の本作は残念ながらそこまでの位置には到達できなかったようです。

カンヌ映画祭パルムドールを受賞するなど評価も高い本作ですが、TV版を観たこともなく、当時の空気を吸ったこともなく、ましてやアメリカに住んだ経験もない身としては全く楽しめる要素がありませんでした。野戦病院が舞台というシチュエーションも、当時はともかく現在では様々な作品で登場済の陳腐さが拭えませんし、ブラック・コメディとしてもそれほど笑いが取れる訳でもなし。

古い作品でもストーリー性の強い作品はそれほど同時代性にとらわれることなく楽しめると思います。また、その対極ですが映像の芸術性や音楽などに特色のある作品であればその世界観を楽しむということも出来るでしょう。しかし本作はそのどちらにも該当しないのですね。「野戦病院を舞台にしたブラックコメディ」というコンセプト自体の限界でしょうか。あらゆるジャンルの中でもコメディというのは特に同時代性が問われるものでしょうから。起承転結もなく、小規模な事件が淡々と、特に解決するでもなく起き続け、いつの間にか映画が終わってしまった感じです。

そんなわけで本作の評価は低いものとなりました。正直なところよほどの映画ファンでもない限り、今現在本作をあえて見る必要はないと思います。脚本、演出、演技など映画としての品質が悪いわけでは決してないのです。しかし映画なり音楽なり文化、風俗というものには当時の空気の中で体験してこそ意味があるものがあり、本作もそのような作品だったのではないかと思いました。