BS1スペシャル「伝説の晩餐会へようこそ2~冷戦後の新たな戦い」:ゴルバチョフから見た冷戦終結後の世界

先週再放送された第1回に続いて視聴。

今回もタイトル負けの感は否めない。むしろ前回より「晩餐会」が番組の内容に占める比重は下がっているように思える。冷戦後の新たな世界構造を追う今回も、首脳会談を軸に当時を振り返るという番組のコンセプトは変わらないのでその点について特に問題はないのだが、今回は冷戦後の湾岸戦争ソ連崩壊までの期間を追う内容となっているため、首脳会談がブッシュ(父)-ゴルバチョフの両者に限られており、レーガンミッテラン、コールと言った個性も立場も、その政治的意図も異なる3者との会談を解説した前回に比べると、首脳会談そのものの役割が減じている印象も否めない。

前回の番組では「冷戦終結」という目的に如何にそれぞれの首脳会談が貢献したか、という点が番組の主題であったが、冷戦終結後の世界を描く今回の放送で、首脳会談は世界の構造を変えるほどの役割を持ちえない。それはすでに冷戦という米ソ2大国の対立構造が崩れた世界の話であり、その後の世界構造の構築において少なくともソ連はその主役ではなかったことが原因と言えるだろう。

今回の番組のポイントは、冷戦終結後の新たな世界構造が模索される中で、最終的にソビエト連邦が崩壊するに至る点であり、その過程として湾岸戦争が取り上げられている。この戦争を巡るゴルバチョフのアメリカに対する妥協的(と見える)な姿勢が旧ソ連保守派の反発を招いたことが、ソ連崩壊の直接的かつ最終的な原因となる保守派のクーデターの理由の一つとなってゆく様子が解説されている。ただこのソ連崩壊に至るまでのプロセスや、その原因についてゴルバチョフによるコメントは少なく、またクーデターの失敗についての解説が少なく、その後の急進改革派による権力の奪取については全く語られていないなど、不満の残る内容だと思う。これは本人にも責のある話なので、ゴルバチョフが語りたくなかったということなのだろうか?つくづくこのシリーズはゴルバチョフを主役として制作しているのだな、と感じた。

面白かったのは番組後半、アメリカ大使館での晩餐会で、旧ソ連保守派のクーデター計画をつかんだアメリカが、それをゴルバチョフに伝えるシーン。番組のクライマックスともいえるのだが、実はその晩餐会の出席者にクーデターの首謀者の半数がいたというのだから結構笑える。本当ならそれはあまりにもアメリカうかつすぎでしょう。「伝説の晩餐会」のタイトルとは裏腹の間が抜けた話で脱力する。結局晩餐会の19日後にクーデターが実行され、ゴルバチョフは軟禁されることにあるのだが、それに関して当時のホワイトハウス報道官のコメントが「我々はすぐにクーデターの実行者が分かりました。驚きましたよ、晩餐会で私の隣に座っていたのです」と、クーデターの首謀者をよく把握もせずに言ったのかよ、出席者ほとんど容疑者予備軍じゃねーか、お前らが背中押したようなもんじゃないか、とツッコミどころ満載です。クーデターのような政治的にセンシティブな情報を、晩餐会のようなシチュエーションで、首脳同士のコミュニケーションを通じて知らせるというのはさすがにインテリジェンス活動としてあり得ないと素人ながら思いますがどうなのでしょう。ちょっと現実感が無いように思えます。

正直なところソ連崩壊の側面を描く内容としては不満が残る内容ではあります。来週再放送のシリーズ第3回は日ソ・日ロ交渉についてらしいですが、さすがにもう見なくてもよいかという気がしてきました。