BS世界のドキュメンタリー『プーチンの道~その権力の秘密に迫る~』(11月28日放送)

2015年に制作された番組の再放送。

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これだけ汚職の影が付きまとい、強権的な政治姿勢が批判されているとしても、それはやはり西側の視点で見た一面でしかないのかな、という印象。実際のところプーチンという人物は2000年から事実上17年近く権力のトップに座しているわけで、それは一部の人々にとっては残念だろうがロシアの国民から彼が支持をされていること以外に説明は難しいだろう。

ロシアという国は、その前身であるソビエト連邦も含めて汚職の絶えない国であり、さらに前進であるロマノフ朝ロシア帝国も含めて強権的な体制が続く国とも言える。その歴史の流れで考えれば、現在のプーチンという指導者は多分ロシアにとってそう悪くない指導者なのだろう。確かに前任者同様汚職の噂が絶えず、前任者以上に強権的だが、少なくとも経済を成長させて、国の威信を復活させたのだから、それだけでも多くの国民は多少のことは目をつむり、支持を続けるだろう。腐敗して強権的でも無能では国民の支持は得られず、また現代という時代は国民の支持がなければ独裁政権も維持はできない(だからこそポピュリズムが注目される)ことを考えれば、プーチンを単純に独裁者と断ずることはいささかためらわれる。

一方でロシアという国の今後についても気になることは多い。番組では軽く触れられていただけだが、これだけ権力や人気が集中し、やはり有能と言わざるを得ない人物が権力の座を引いた後の国家を誰が率いていくことになるのか?そもそもプーチンが権力の座を引く場合、それはどのような形になるのか?

特定の人物に権力が集中する政治体制ではありふれた問題だが、ロシアの場合はどうだろう。少なくとも制度上は民主的な選挙制度が存在する。一方で西側のような段階的なプロセスを経て民主化を実現したわけではないこの国で、西側が期待するような民主的な指導者が選挙で選ばれるのだろうか?アメリカですらドナルド・トランプのような人物が大統領に選ばれるのだから、正直なところ民主的なプロセスで民主的なリーダーが選ばれること自体にそれほど大きな期待を抱くことは難しいだろう。良くも悪くも、またどのようなプロセスを経ることになっても、プーチン引退に伴う権力の空白は大きなものになるだろう。

最もプーチンは現在65歳であり、年齢を考えてもまだまだ権力の座を引くのは先の話だろう(今の任期は2018年。2期目に当選すれば2024年)。ただ少なくとも番組の内容を見る限り、彼は自己の保身のためにも権力を握り続ける必要があり、一方で自らを脅かしかねない政敵を徹底的に排除してきている。それは結局彼を後継する人物が存在しないことを意味し、権力を保持するためにいつまでも自身が前面に立ち、院政が許されない状況に陥っているとも見える。この状態は彼自身とロシアという国家にとっても自縄自縛ともいえるのだが、この状態がいつ、どのような顛末を迎えるのかには関心を持たずにいられない。