キャプテンスーパーマーケット:80年代風スラップスティック・ホラー・コメディ?

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評価:0.5(5点満点)

総評

カルト映画の傑作として有名なサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』シリーズの3作目。3作目ではありますが、別段前作、前々作を見ておく必要はありません。一応冒頭に前作のダイジェストがありますがそれも見なくてよいくらいです(ちなみにこのダイジェストにのみ主人公の彼女役で、当時全盛期とも言ってよいブリジット・フォンダが何故か出演しています。本当にこのシーンのみの出演!)。

チープですね。チープさにあふれています。脚本もチープ、演技もチープ、演出もチープ、セットもチープ、特撮もチープ、どこを取ってもチープさに満ちた映画です。ちなみにBGMは大変勇壮でかっこいいです。

70年代後半から80年代にかけてのホラー、スプラッター・ムービー全盛期はこのようなチープな映画が本当に粗製乱造されていた時期だったのですが、それを思い出し懐かしい気持ちになりますね。

ですがこの映画の公開は1993年。93年と言えば『ジュラシックパーク』や『シンドラーのリスト』の公開と同年です。監督のサム・ライミにしてもデビュー作『死霊のはらわた』公開から10年以上経過し、それなりに名が通っている時代です。別に予算がそこまで厳しかったとも思えません。そう考えるとこのチープさは意図的な演出ではないかと思うのですね。サム・ライミがあのホラー、スプラッター全盛期の雰囲気をもう一度90年代に再現しようと試みたのではないかとすら思えます。それくらい本作の雰囲気は良くも悪くも80年代のB級C級ホラーテイストに満ち満ちています。そもそも原題が『Bruce Campbell VS Army of Darkness』ですからね。確信犯でしょ、これ。

内容も『死霊のはらわた』シリーズ第3作と言いつつ全然怖くないです。というよりホラーではありません。ホラー風味のスラップスティックコメディと言ったほうが正しいです。ホラー映画の中で『トムとジェリー』を演じている感じです。脚本もあってなきがごとしの無軌道振りですので、これをカルト映画の傑作と言うか、単なる失敗作と言うかは人によって分かれるでしょう。私は結構好きです。ちなみに本作の主人公でブルース・キャンベル演じるアッシュはアメリカではジェイソン(13日の金曜日)やフレディ(エルム街の悪夢)とならぶホラー・アイコンだとのことですが、それって本作も含めての評価、むしろ本作抜きではあり得なかった評価だと思うのですよ。

この映画を撮ったサム・ライミが2000年代に入るとスパイダーマンシリーズで売れっ子監督となるのですから分からないものです。

個人的にはむしろ好きな作品ですが、やはり映画としての質は褒められたものではないので評点は低めです。ですが話の為タネとして見ておくのもまた良しです。意識の高い映画ファンなら決して見ることのない作品です。意識の低い映画ファンなら視界の片隅にも入らない作品です。