『Stronghold HD』”防衛”が楽しい

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城を防衛することが楽しい。本作を一言で評するならばこれに尽きるだろう。

2002年に発売された、RTSでは古典に入る作品。2013年に発売されたHD版をプレイ。

基本的なUIは『Age of Empire』と同じであり、造りの面では非常にオーソドックスな作品である。その本作の特徴は”防衛”に主眼を置いている点である。基本的に守って守って守り抜く。守るが勝ちなRTSなのである。

そう説明すると地味なゲームであると感じられるかもしれない。ストラテジーゲームの楽しみは戦闘にあり、敵を攻撃して破ることがカタルシスだ、という向きもあるだろう。しかしなかなかどうして”防衛”が楽しいのである。いや、楽しい、と言うよりは”楽(らく)”なのだ。まったりと楽しめる。

正直なところAOEなどのRTSにおける戦闘ってそれほど楽しめないのである。むしろ面倒と感じることさえある。RTSの多くの作品における戦闘は、「攻めて勝つ」ことが目的であり、それは結局古くからの格言にある「城攻めは防衛の3倍の兵力が必要」ということであり、せっかく内政に勤しみ大事に育てた軍隊を、湯水のように消費した挙句、見積を誤った結果攻め落とすことが出来なければ再度軍備を整える、というサイクルが自分にはだるいのだ。(ゲームによってはそこで詰むものもあるし)

『Stronghold』の場合、全21ステージで構成された軍事キャンペーンのほとんどが「自分の城を守り切る」ことが勝利条件となっている。家を建て、人を集め、木材や石などの素材を集め、食料を確保する。内政が軌道に乗れば軍備を整え、敵の侵略を待ち、これを撃退する。数をそろえることよりも城を整備することが重要なのだ。

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とはいえ所謂タワーディフェンス的な要素はむしろ薄いと言える。確かにそれが重要となるミッションも存在するし、実際の防衛ではタワーディフェンスの手法(安い木の柵で通路を作り、敵兵の流れを誘導するなど)は役に立つが、それほど重要と言うわけでもない。むしろ本作は兵站ゲームに近い。一定のサイクルで発生する敵の攻撃に対し、資材と食料を如何に確保し、軍備と防衛を整えるのか?自前で整えることも出来れば市場から調達することも出来る。時間をお金で買うか、時間でコストを抑えるか?優先すべきは兵隊か?城か?各ミッションにより条件は異なる。はじめから所有する資材や食料の量、軍備の内容、侵略の間隔。ミッション毎の初期条件を踏まえて最適な内政と兵站を整えることが本作の魅力だ(なので本作にタワーディフェンス的な楽しさを期待すると裏切られるかもしれない)。こちらから打って出る必要がほとんどないので、引きこもりながら内政に軍備にまったりと勤しむことが楽しいのだ。

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大部分のミッションは一定時間砦や城を守り切ればクリアとなるので、1ミッションの時間もそれほど長くない。やめ時の見つけられないストラテジーゲームとしてはこれもありがたい。とはいえ中には一定の資材を一定数集めることが勝利条件となるミッションもあり、その場合延々と続けて城と軍備を拡張することも出来る。*1

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21ある軍事キャンペーンには、3つほど攻城専門のミッションがあるのだが、これが難しい。他の防衛シナリオと比較してもけた違いだ。これはこれで軍備の補充が一切できない条件で、試行錯誤しながら攻め口を考える面白さがあるのだが、3つもあれば十分。やはりまったりと防衛を整えることが本作の魅力だろう。

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5つの政治経済キャンペーン、21の軍事キャンペーンを難易度普通でクリア。所要時間はだいたい60時間弱。¥150でこれだけ楽しめれば十分だ。続編のCrusaderも次のセールで購入してみようか。

*1:下のショットはその一例。石弓兵500人で敵を迎撃。敵、リスポーン地点からほとんど動けずに全滅