『Metro Last Light Redux』これは問題作と言っていいのでは?

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先日感想を投稿した『Metro 2033 Redux』に続き、続編である『Metro Last Light Redux』をクリア。

プレイ時間は10時間程度なので、ほぼ前作と同じ程度のボリューム。基本的にはゲームシステム、シナリオ共に前作からの踏襲であるため、よく言えば安心感があり、悪く言えばマンネリとも言える内容だ。しかし、ある1点において、本作には「問題作」とも言える要素が含まれている。

その点については最後に述べるとして、まずは作品の感想を。

シナリオ感想:前作同様、シナリオとしては凡庸なのだが...

物語としては、前作『Metro 2033』のノーマルエンド後の時間軸から開始される。主人公アルチョムは、前作で行動を共にしたミラー率いるレンジャー部隊に所属している。そこに、以前ミサイル攻撃で滅ぼしたはずのダークワンの生き残りがいることが、旧知のカーンにより知らされる。

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ダークワン最後の生き残りを見つけるため、再び探索に赴くアルチョム。しかし、その探索の途上、ナチス勢力によりアルチョムは囚われの身となってしまう。こうしてナチス共産主義者、レンジャーによる三つ巴のダークワン争奪戦が始まる...。

シナリオとしては敢えて語るほどの内容ではない。まあ前作の続きとして妥当な内容と言えるだろう。そもそも個人的にはFPSシューターにそれほど物語性を求めてはいないので、ある意味プレイのつけたし程度になれば良いと考えていた。ところが、この凡庸なシナリオの質が、最終的なプレイ観に大きく影響することになるのだから分からないものだ。少なくとも物語にのめりこむほどの内容ではなかった。まずはそのことを記しておく。

プレイ感想:システムは前作踏襲ながら、やり応えを増した

ゲームシステム自体はほぼ前作を踏襲している。乏しい弾薬、手動の発電機、フィルター残量を気にしながらの戦闘など、世紀末的窮乏感の味わいはそのままだ。グラフィックの向上や、新たな武器やアタッチメントの追加はあれど、大きな変更があるわけでは無い。

それでも本作は前作『Metro 2033』に比べて、ゲームプレイそのもののやり応えが大きく増している。

第一に本作では対人戦の比率が高い。前作では弾薬をかっぱぐための舞台装置程度の扱いでしかなかったナチス共産主義勢力を相手とする戦闘が非常に多い。おそらく戦闘の7割近くが対人戦ではないだろうか。ひたすらプレイヤーに対して特攻をかけてくるため、単調となりがちなミュータント相手の戦闘とは異なり、様々な立ち回りが要求される対人戦の増加は個人的な好みにも合う嬉しい変化だ。

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第二にボス戦の増加。ミュータント相手の戦闘は比率こそ下がったものの、決して添え物扱いとなっていない。前作ではライブラリアン程度であったボスクラスの敵キャラが、本作では増加している。これがちょうどよいアクセントとなり、対人戦、ミュータント戦共に戦闘の単調化をうまく抑制する効果となっていると感じた。

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第三にフィールドエリアの多様化だ。前作では地下のメトロ、地上のモスクワという、大きく2種類程度であったフィールドエリアは、今回水路あり、沼地あり、広場あり、邸宅ありと、中々にそのバリエーションを増している。前作同様基本的に一本道である本作において、次々とその姿を変えるフィールドの存在もまた、プレイヤーを飽きさせぬことを意図していると思われるが、それはどうやら成功したと言っていいようだ。

総じて本作のプレイに関しては、前作の粗と言うべき部分を開発者が丹念に修正することで、大きくその品質を向上させている。基本システムに大きな変更はなくとも、続編として十分に期待に応える出来だと言っていいだろう。

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プレイスタイルと直結するエンディング分岐という問題点

さて、ここで冒頭に挙げた問題点について触れておきたい。本作は前作同様のノーマル/トゥルーのマルチエンディングとなっている。前作では、プレイ中NPCとのコミュニケーションにより、「カルマ」と呼ばれるパラメータ値が上下し、クリア時の値によってエンディングが分岐した。今作でも同様のシステムが実装されているが、そのパラメータを上下させる変数がより複雑なものとなっている。

問題なのは、トゥルーエンディングに必要な値を得るための行動として、「敵を(なるべく)殺さない」「主要敵NPC2名を殺さない」「むやみに遺体から弾薬を奪わない」という、ゲームプレイそのものに大きく影響する選択肢が含まれている点だ。

はっきり言ってしまうと、本作では自分のように、FPSシューターをひたすらトリガーハッピーに楽しみたいタイプのプレーヤーは、まずトゥルーエンディングにたどりつかないのだ。真のエンディングにたどり着くためには、ひたすら窮乏に堪え、ステルス戦闘に徹し、憎たらしい相手も殺さない、というプレイに徹しなければならない。自分にとって、これではステルスゲームではなくストレスゲームになってしまう。

そのうえ、ノーマルエンド後に改めてトゥルーを目指そうとすると、かなり前のチャプターからの再開を余儀なくされる。エンディングまでの道のりはノーマル/トゥルーで同じなので、この繰り返しは流石に堪える。しかも再開後はひたすら自分の好みと真逆のプレイが必要となるのだ。プレイヤーの選択により、エンディングが変化するのは良いのだが、それが結果としてプレイスタイルを強制する造りとなっていることは正直いただけない。自分が望むスタイル次第で特定のエンディングにたどり着けない、と言うのは正直欠点と評されても仕方ないだろう。

幸いに、と言うべきなのだろうか。最初に述べたように、本作においてシナリオ自体は凡庸で、それほど見るべき内容はない。そのため、プレイ時にノーマルエンドとなった自分も動画サイトでトゥルーエンドを確認するだけで満足した。これがもっとシナリオ重視の作品で、さらに分岐によって真の最終ステージが解放される、といった構成になっていた場合、実質やり直しとなると言えどもプレイせざるを得ないだろう。その結果、トゥルーにたどり着くためのプレイそのものがストレスとなり、結果としてどのようなエンディングにたどり着いたとしても、それを素直に味わうことが難しくなるだろう。本作は、シナリオの凡庸さゆえにトゥルー目当てに望まぬスタイルでのプレイ再開をする気が起きず、結果としてストレスを感じることなくプレイを終えることが出来た。これはある意味僥倖と言えるだろう。正直本シリーズにおけるエンディング分岐はあまり必然性のある演出とは言い難い。

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総評:前作に満足したならば買って損はない

本作『Metro Last Light』は、『Metro 2033』の良く出来たアップグレード版と言うべき内容だ。大きな変革は無いが、プレイの質は格段に向上している。問題点はあるが、シナリオの凡庸さゆえに目をつむることが出来る。個人的には2作合わせてお勧めできる作品と言える。

そうなると今年発売された『Metro Exodus』をどうしたものか。最新作はオープンワールドと言うことなので、この一本道ゲームがどのように進化したのか非常に気になる。とはいえ今すぐにでもプレイしたい、というほどではないので、積みゲーを消化しつつ、半額程度のセールになるまで気長に待つことになるだろう。しかし『Metro Exodus』はSteamではなくEpic Game Storeの時限独占なので、プレイするのはしばらく先になりそうだ。(Epicはセールの頻度や割引率が今一つまだ見えないし...)

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