『Replica』 デザインの勝利

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『Replica』をクリア。全12種類存在するエンディングの全てを見てはいないが、Trueエンディングらしきものは達成したので一応クリアと言うことにしておく。所要時間は約4時間。

2016年リリースの作品であり、約3年前の作品。プレイヤーは裸の状態で部屋に閉じ込められた状態。目の前には一台のスマートフォン。自分を監禁しているのは誰なのか?その理由は?このスマホは誰のものなのか?全てが不明のままゲームが始まる。

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スマホにログインするために必要なパスコードの解析に始まり、連絡帳、写真アプリのプロパティ、SNSの投稿、スマホに残されたあらゆる痕跡から持ち主の情報を追跡する。誰が、いかなる理由でこのような行為を強いるのか?スマホを探るうちに少しずつその謎が明かされてゆく。ディストピア的な世界観が伺えるその過程はなかなかにスリリングだ。

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本作はインディー・ゲームの傑作のひとつとしての評価も高く、Steam上のレビューも”非常に好評”だ。そのカギはやはり本作におけるUIのデザインにあるだろう。

本作の最大の特徴は、ゲームプレイが全てスマホ(を模したプレイ画面)上で完結していることにある。プレイヤーのあらゆる行動はスマホの中に限定され、スマホ上で可能なアクションの範囲内でゲームを進めてゆかなければならない。メールやSNSで持ち主の情報を探るのみならず、設定画面や検索ツールまでもがプレイ上重要な役割を持っている。正にスマホの機能を駆使して進めるゲームである。

既に紹介したように、本作はディストピア的なサスペンス/ミステリーと言うべきアドベンチャーゲームだが、そのシナリオだけを見れば幾多の映画、小説、コミックなどに影響を受けたことが伺える(エンドロールでも製作者がその旨を語っている)ものの、殊更オリジナリティがあるわけでも傑作と言うほどの内容ではない。高い評価の根底にあるのはスマホを利用したUIのデザインそのものにあり、それが本作の魅力の源泉と言うべきだろう。

このデザインが優れていると思うのは、応用が効くという点だ。本作のようなサスペンスに限らず、推理もの、ホラー、恋愛、感動的なドラマなど、テキスト系のアドベンチャーという形式であれば、どのようなジャンルにも展開することが可能だ。これはアイデアと言うよりはそのデザインの汎用性を評価すべき設計であると思う。

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自分はPC版をプレイしたが、本作はスマホ版もリリースされているので、未プレイの方はそちらをプレイした方が良いだろう。没入感はさらに増すこと請け合いだ。

アドベンチャーゲームとしての難易度は高めで、白状すると自分は攻略サイトの世話になってTrueエンディングを見ることになった。ヒントが全く無いような理不尽な謎は存在しないが、それなりの前提知識が必要な作品なので、そのあたりは人を選ぶだろう。