『Serious Sam 3:BFE』 ”おバカでタフでノリノリなFPS”ではない

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『Serious Sam 3:Before First Encounter』をクリア。難易度はノーマル。所要時間は19時間。

シリアスサム・シリーズは本作が初プレイだが、前作、前々作を未プレイでも全く問題なし。”地球を侵略するエイリアンを主人公がブチのめす”とだけ認識しておけば問題ない。何ならその程度の認識すら必要ない。迫りくる敵をとにかく倒せばいいだけの、オールドファッションFPSの味わいが深い作品だ。

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本作の発売は2011年だが、FPSに革命を起こした『Half-Life』から10年以上も後発の作品としては、驚くほどに古臭い作品と言える。シナリオドリヴンではなくあくまでゲームプレイ中心の構成や、ひたすら押し寄せる敵を倒し続けるコンセプトは正に『Half-Life』以前の王道FPSと言えるだろう。それでも本作の評価はそれなりに高く、Steamのレビューでも”非常に好評”を維持している。やはり皆FPS好きなのだな...

オールドファッションなFPSが、グラフィックやモーションなど技術的に現代の装いを備えて現れた作品と言えるので、正直なところシナリオや演出について細かく評価する作品ではない。そのため、感想として書くのはゲームプレイが中心となる。

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本作をプレイする前の”Serious Sam”シリーズについては、「とにかくアクの強いFPS、大量に押し寄せるカミカゼのようなグロい敵キャラを、とにかく銃やロケランをぶっ放して蹴散らすゲーム」といった印象を持っていた。要は”とにかく銃持って突っ込んでぶっ放せばいいんだろっ!ヒャッハー!”なゲームだと考えていたのだが、実際にプレイするとその印象は大きく変わることになった。

アクの強さも、敵が大量に押し寄せる点もその通りだったが、本作はただ銃をぶっ放せばクリアできるほど単純なゲームではなかった。とにかく敵の量が大量である点もそうだが、意外に敵が硬い。最下層のモブはハンドガン2発で沈むが、その上位程度のモブですら、もうハンドガンでは捌けない。近距離でのダブルバレル一発、もしくはアサルトライフルを10発以上叩き込む必要がある。中型より大きなモブになるともうロケランや迫撃弾でないと処理できない。こういった敵キャラが大量に延々と押し寄せてくる。

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考えなしに突っ込んでいけば速攻で溶かされる。本作のステージは、終盤ほど開けたエリアが多いため、四方八方から攻撃を受けると逃げる暇もなくゲームオーバーとなる。そのため、慎重に歩を進めつつ、進行により出現する敵を引き撃ちで処理し、全滅させたのちに再度エリアを進む慎重さが要求される。エリア終盤の戦いでは、複数の方向からの攻撃を避けるため、建物の中や壁を背にした戦いを強いられ、弾薬が乏しくなれば被弾覚悟で飛び出し、補給後に再び遮蔽物の陰に隠れ、少しずつ敵を排除するなどの立ち回りが必要とされる。

そのため本作を所謂無双系FPSと思ってプレイするとかなりストレスが溜まるだろう。一方で上に挙げたようなゲームプレイは現代のFPSでは最早常識的な仕様であることを考えると、本作はそのコンセプトこそオールドファッションFPSだが、きちんと現代FPSのプレイスタイルを取り込んでおり、そのあたりが近年のプレイヤーからも一定の支持を受ける理由なのかもしれない。

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自分も結構本作を楽しめたのだが、正直なところ不満も多い。その最もたる点だが、本作は終盤がとにかくダレ気味なのだ。本作は全12ステージで構成されているのだが、各ステージとも基本一本道で、進行に応じて一定の敵が出現する仕様となっている。ステージが進むほどに、出現する敵がより多く、より強力になっていくのだが、結果として終盤のステージ程肥大化してしまうのだ。実際ラストステージはボス戦にたどり着くまでに2時間半以上を要することとなった。やっていることはどのステージもそう変わらず、敵の数と硬さと火力だけが増してゆくため、とにかく冗長感が強い。よほどのシューター・フリークでもない限り飽きが来てしまうだろう。この点は明らかなマイナスなのだが、本作のコンセプトを考えればこのスタイルは崩せないのだろうな...

そんな終盤にかけてテンションが下がる本作だが、ラスボス戦はなかなか出来が良い。ラスボス戦で使用できるジェットパックがとにかく楽しい。これまで地上を駆けずりまわっていた戦いが一変し、最高の起動性を手に入れることが出来る。これは本当に楽しかった。ラスボス戦のみでしか使えないのが大変残念。少なくともあと2,3のステージで使用できる場面を増やしていたら、本作の評価はかなり変わっていたと思う。

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現代FPSのプレイスタイルを取り込んだ、オールドスタイルのFPS。それが本作に対する評価だ。難易度は決して低くないが、シナリオよりもプレイ重視なプレーヤーならばその期待に応えることが出来る作品と言えるだろう。

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