『Besiege』 たのしい工作の時間

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『Besiege』のキャンペーンをクリア。所要時間は26時間。

本作は物理演算処理されたサンドボックス上で攻城兵器を作成し、中世風の村や城を蹂躙するゲーム、と謳ってはいるが、基本的にビークルに特化したシミュレーターと言って良いだろう。

予め用意されたパーツを組み合わせて好きなようにビークルを作成する。作成したビークルサンドボックス上で動かす。それだけのゲームなのだがこれが大変に面白い。

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”攻城兵器を作る”がコンセプトではあるが、何を作るかは自分次第。自動車でも飛行機でも何でも構わない。全く知識のないところから始め、最初は車体に車輪を4つつけただけの原始的な車を作成。試しに動かす...こいつ、動くぞ!。しかし車輪を付けただけでは前後に動くだけ。左右に曲がるにはどうすれば良い?左右の車輪に割り当てるキーバインドを変えるか?ステアリングをつけるか?どうにか操作可能な車を作ったが、ちょっとした段差を乗り越えるにも一苦労。次はどこを改良するべきか...。

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試行錯誤とステップアップの繰り返し。それこそが本作の神髄だ。とは言うものの、いきなりなにもないサンドボックスに放り込まれて”さあ作れ!何でもよいぞ!”と言われても困ってしまう。そんなプレイヤーの為に本作では50弱のキャンペーンミッションが用意されている。これがなかなかに良い出来だ。本作のコンセプトである攻城ミッションのみならず、特定の対象を運搬する、指定されたルートを走破する、など様々な課題が用意されており、全てのミッションをクリアすることで、本作の基本的なパーツ構成やビークルの作成方法などを把握することが出来る。チュートリアルとして秀逸な内容だ。

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これは正に少年時代に感じた工作の楽しみそのものだ。プラモデルでもラジコンでも、自分で作ったものを動かして遊ぶ。そのプリミティブな楽しさが本作には詰まっている。用意されている部品の数は限られているが、それを如何様なビークルに組み上げるかは正に自分次第。物理演算されたサンドボックスでは、強度が足りなければまともに動作しない。出力をどれだけ挙げても反トルクを計算しなければ安定しない。様々な課題をトライ&エラーの繰り返しで克服したときの喜びもつかの間、もっと改良すべき点が無いかと考えてしまう。これも中々にやめ時が見つからない作品だ。

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実際キャンペーンをクリアして得られる知識は初歩の初歩だ。Youtubeなどで検索すれば本作がどれだけ多くのプレイヤーのクラフトマンシップに火をつけたか理解できるだろう。戦車、複葉機爆撃機、果てはジェット機や2足歩行ロボットなど様々な、そして膨大な”作品”がそこには披露されている。いや、本当に人間の創意工夫と言うものに限界はないのだと実感する。部品を組み合わせてキャタピラを作る。火炎放射機とウォータージェットを組み合わせてジェットエンジンを作る。どうやってこんな発想を思いつくのかとあきれるほどだ。

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”作品”の多くはWorkshopを通じて提供されており、それを入手して動かすのも楽しい。自分にはそれほどの作品を作る知識は無くとも、解説動画を見つつ、同じ機体をゼロから作成するのも楽しい。他のビルダーの創意工夫が非常に良く理解でき、自らのクラフトにその知見を反映するのもまた楽しいものだ。

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ディスカバリーやヒストリーなど、CS放送の番組で車やバイク、ラジコンなどのカスタムやビルドに関する番組を観るのが好きだが、自分で始めるには色々と面倒だ、という人には正にうってつけの作品。必要なのはパソコンと自らの創意工夫と、そして根気だけ。年代を問わずハマること請け合いの作品だ。マインクラフト級、とは言わなくともそれに準ずるくらいの注目と人気を得ても良いと思うのだが...やはり少々ゴアな表現が問題なのだろうか。だとしたらなんとももったいないことだ。

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