『Demon's Souls』ソウルシリーズ、その驚異的な原点

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『Demon's Souls』1週目をクリア。所要時間は53時間。

『Darksouls3』『Darksouls2』に続き、今回はシリーズの第1作である本作をプレイした。本来は『Darksouls Remastered』の順なのだが、最近レビューした『Armored Core4』を購入する際に安かったので合わせて買ってしまったのだ。

まだ1週目を終えたばかりだが、今回も堪能させてもらった。デモンズについては当時から死にゲーとしての噂だけは聞いていたが、完全にゲームから離れていた時代だったこともあり、今回のプレイはほぼ初見の状態である。ダクソ2のレビューでも書いたが、やはりソウルシリーズの初見プレイはいいものだ。

本作をプレイして唸ったのがその完成度。ゲーム単体の品質としての完成度と言うより、現在”Soulslike”と評されるそのスタイルとしての完成度だ。原点である本作において、そのスタイルはほぼ完成されていると言っても過言ではない程の出来だ。『Darksouls3』からシリーズに触れた身としては、正にその源流に触れる意味で興味深いプレイ内容だった。

 

"すべては此処に在り”。

”死にゲー”の原点にして代表作ともいえる「ソウルシリーズ」を構成する要素は既に本作において提示されている。「ソウルシステム(死亡で失い未回収で再度死亡すると完全にロスト」「プレイスタイルに応じたキャラビルド」「多様な戦術を可能とする武器/魔法/奇跡の仕様」「攻略自由度の高いMAP」「難易度が高く個性の強いボス戦」等々数え上げればキリがない。最終作である『Darksouls3』からプレイした自分から見ても、基本的な仕様がほとんど変わっていないことに驚いた。本作からダクソ3の間には7年の差があり、CS機の世代も一世代進んでいる。にもかかわらず本作のシステムがここまで踏襲されているのは、そのスタイルがハードのスペックに依存しない優れた汎用性を持つことの証明だ。本作を原点とする作品群が独立したジャンルとして評価されるのも当然と言うべきだ。最新作からシリーズに触れたプレイヤーとしては、これほどまでシステムに違和感を感じることなくプレイできることには驚嘆した。プレイ感覚に”レトロゲー”感は一切感じさせない。10年前の作品と言うことを考えれば驚くべき完成度だと言える。

原典を辿る楽しさ

それでも本作は10年も前の作品。2019年現在、最新作の後にわざわざプレイして楽しめるのか?答えはYES。本作をプレイして楽しいのはシリーズの原典をそこに見ることが出来るからだ。”腐れ谷”に”病み村”、”クズ底”の情景を重ねる。ボーレタリアの城門を見て、シリーズ恒例の大階段を思い出す。”心折れた者”の元祖”青ニート先輩”に歴代ニート枠の侘び寂びを感じる。”ハイエナのパッチ”に蹴り落されて感じる実家のような安心感。etcetc...。しみじみ歴代シリーズの製作者が本作を丁寧に引き継いでいったことが伺える。

各ステージやNPCのそこかしこに以後のシリーズでお馴染みとなる要素が伺える。各作品をプレイ済ならばニヤリとすること請け合いだ。

ステージの華であるボス戦についても同様だ。シリーズで登場するボスキャラはいくつかのタイプに分けられるが、その原型は基本的に本作で網羅されていると言って良い。既に後続シリーズで揉まれたこともあるせいか、ボス戦で苦労することはあまりなかった。ボスキャラの挙動については多彩さや俊敏性において後続作が優れているのだからこれは当然だろう。(ただし”マンイーター”は例外。複数体ボスの原典。こいつに何度転落死させられたことか...)

拘りと洗練により昇華したシリーズ

シリーズの魅力である優れたシステムとダークな世界観は既に本作に備えられている。それらは本作が持つゆるぎない独自性だ。後続作品は、その優れた独自性をフォーマットにして多くの拘りと洗練を注入し、シリーズとして進化してきたことが良くわかる。

例えば”エスト瓶”と”篝火”の導入。本作では大量に手に入る回復アイテムを”エスト瓶”として回数制限を設ける。同時に本作では基本的にボス戦エリアにのみ設けられた”篝火”の配置を増やす。このことはステージ攻略やボス戦をよりスリリングにすると同時に、繰り返し挑戦することへのハードルを下げる。正に”死にゲー”としての純度を上げる試みだ。

例えばキーアイテムから消耗品に至るまでの細かい「フレーバーテキスト」の追加。本作にもアイテム説明欄は存在するが、後続作に見られるような「フレーバーテキストで断片的に物語を示唆する」手法は見られない。「はじまりの火とその継承」という大きな物語を細かいテキストの積み重ねで構成し、考察をプレイヤーに委ねるその手法は物語性を深め、”死にゲー”に並ぶシリーズの大きな魅力にまで昇華された。

ソウルシリーズは単なる高難易度な”死にゲー”として評価されているのではない。今作を起点としてシステムのみならず、物語やデザイン、キャラクターの丁寧な継承と更なる魅力の積み重ねが多くのファンの支持を受け続ける理由だ。これをリアルタイムで経験することのできたプレイヤーにはつくづく羨望を禁じ得ない

プレイしないのはあまりに惜しい

 本作をプレイして残念だったのは、2018年でオンラインサービスが終了している点だ。シリーズでおなじみのオンライン機能を本作ではもう楽しむことは出来ない。協力も侵入も出来ないし、血痕やメッセージを見ることもできない。おなじみのメッセージ(”ジャンプの時間だ”、”心が折れそうだ...”等々)を見ることが出来ないのは結構寂しい。おまけに既に生産が終了しているPS3でしかプレイできない。

それでもダークソウルシリーズの経験者で本作未プレイであるならば文句なしに勧められる。シリーズのファンであるならば、未プレイであることは損失であると言っても良い。もし眠っているPS3が自宅にあるならば、引っ張り出してプレイしてほしい。中古ならお値段も安いものだ。そこには素晴らしい原典への旅が待っている。