『Just Cause3』 闘え!ジャスコ太郎!

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 『Just Cause3』をクリア。所要時間は33時間。

Just Causeシリーズは本作が初プレイだが、いやこれは色々と語りたくなる作品だ。主に文句の3つ5つは語りたい。ツッコミどころがあり過ぎる作品なのだが、なんだかんだと30時間以上もプレイしてクリアまでしてしまった。

JustCause3ここがダメ①:シューターとして中途半端

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 とにかくTPSとしての出来がよろしくない。ダッシュができなかったりエイムが出来なかったりと、シューターとしての基本動作の時点で間違っている。エイムについては一応”精密射撃”なるPerkを取得できるのだが、スナイパーライフル以外では単にFPS視点になるだけ。そんな代物をPerkにする必要がどこにある、と思わず突っ込みたくなる。

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精密射撃(笑)

Perkの内容も微妙で、取得してもそれほどメリットを感じないものがほとんど。取得のためのチャレンジがだるいのもあり結局2割程度しか取得しなかったがクリアするまで不便はほとんど感じなかった。

照準の設定も微妙で、クロスヘアと敵が重なっていても弾が当たらなかったりと、当たり判定が今一つ分かりづらい。

少し前にUBIの『Ghost Recon:Wildlands』をプレイしたが、シューターとしてそのクオリティの差は歴然。アバランチのスタッフはUBIにシューターの作り方を教えてもらった方が良いだろう。

JustCause3ここがダメ②:不親切、不案内なシステム

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本作一応オープンワールドTPSの体を取っているのだが、とにかく分かりづらいのだ。まずチュートリアル終了後、何をやればいいか分からない。Falloutのような自由度の高いシステムであればそれも当然なのだが、本作はメインミッションとシナリオを軸にしたシステムを取っているのにこれはいただけない。とりあえず各地の拠点を解放すれば良いのかと破壊工作に勤しんではみたが、メインミッションがさっぱり進まない。全体MAP上の牛マークがメインミッションを示していると理解したのはマップ全域を解放した後だ。自分の気づきの鈍さもあるにせよ、あまりに不案内と言うべきだろう。

各拠点の解放もまた不親切。本作における拠点解放ミッションは、敵の施設(燃料タンクや発電設備等)を全て破壊することで達成されるのだが、これがMAP上に表示されたりされなかったり。設置場所も分かり難く、無限湧きする敵の砲火を避けつつ最後の一つを探すのに手間取ることもしばしば。 数が多いわりに代わり映えのしないミッションになぜこれほどストレスを感じなければいけないのか疑問だ。

各拠点の配置も問題だ。MAPには明確に各拠点は明示されていないので、プレイヤーは拠点を探してMAPを飛び回ることになる。大半の拠点はMAPを見れば推測がつくのだが、いやらしいのは各エリアに大体一つくらいMAPを見ただけでは発見できない小規模な拠点が含まれており、その捜索に結構な時間を取られることだ。開発者に一言いいたい。「これ面白いと思ってる?」

全体的にプレイヤーを快適に遊ばせるという意識が大きくかけていると言わざるを得ない。これらの点も『Ghost Recon Wildlands』に大きく劣る点だ。Ghost Reconオープンワールドとしては問題のある作品だったが、プレイは快適で迷うことが無かった。事前にこちらをプレイしていた分本作への評価はどうしても辛くならざるを得ない。

JustCuse3ここがダメ③:個性の薄いキャラクター

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 本作の主人公は”破壊と混乱の英雄”ことリコ・ロドリゲス。ラスボスとなる悪役は地中海の島国メディチを支配する独裁者ディラベロ将軍、なのだが主人公も悪役もどちらもパンチが効いていない。

リコは典型的なベビーフェイスのタフガイで、色々と設定なり背景はあるのだが作中ではそれを活かしたドラマはほとんど描かれず、ほとんど個性も魅力も感じられない。ディラベロについてはもっとひどく、その性格や過去がほとんど語られることが無いため、事実上”独裁者”という記号的な存在でしかない。

そのためベビーフェイスにもヒールにも感情移入の余地がなく、なんともシナリオ的にもメリハリが欠けているのだ。Just Causeは4作目まで発売されている人気シリーズと聞いているが、正直リコ・ロドリゲスはそれを裏付けるだけの魅力を備えたキャラクターであるとは思えなかった。

Just Cause3ここがダメ④:説得力がなく、破綻したシナリオ

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いや、そう思われても仕方ないだろ、お前の場合...

キャラクターの描写がこうであればシナリオもお察し、というところなのだが、正直シナリオはもっとひどい。本作のシナリオの軸には”バベリウム”なる架空の金属の存在がある。バベリウムは舞台であるメディチでのみ生産される鉱物で、強力な爆薬の材料でもあり、金属に吹きかけると無敵の装甲になり、また精製すれば無尽蔵の燃料にもなる万能鉱物という科学的な裏付けもクソもない代物だ。そして本作の悪役であるディラベロ将軍はそのバベリウムを独占して良からぬ陰謀を企んでおり、その陰謀を阻止してメディチを解放するためにリコは仲間たちと戦いを挑む、というのが本作の粗筋だ。

なんなんだこの小学生レベルの安っぽいプロットは?

 バベリウムの幼稚な設定も大概だが、大体ディラベロがバベリウムを独占して何を企んでいるかも良くわからない。世界は私を知るだとか、炎に包むとか悪役らしいセリフを並べてはいるが、具体的なことはさっぱりなのだ。

リコ側も同様で、彼の背景としてメディチの出身であり、ディラベロが起こしたクーデーターの際に両親を失い孤児となっており、しかもその背後には彼が所属するCIAと相棒であるシェルドンが絡んでいるということが明かされるのだが、そのことで何か葛藤が生まれるわけでもなく、打倒ディラベロに邁進するだけ。

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あざといまでの勧善懲悪なシナリオの癖に、主役にも悪役にも物語を動かすだけの動機についての説得力が見事なまでに欠けているのだ。

メインミッションはともかくとして、拠点解放ミッションを進めた前半のプレイでは、なぜディラベロが悪役なのかさっぱり理解できなかった。街並みはプロパガンダが目立つ程度の事あれ平和そのもの。各地には観光客も配置されており、なかなかきちんと統治者やってるじゃないかディラベロ、見直したぞ。正直ディラベロはいいとこトロピコレベルの独裁者にしか思えない。そんな街並みまで破壊の限りを尽くすリコの方がよほど悪役だろう。

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そもそもリコにせよ一応CIAのエージェントという設定の癖に目立ち過ぎだ。いや所詮ゲームだろう、と言われるかもしれないが限度がある。なんせ街を破壊して回っているときすら周囲の人々が”リコだ”、”俺たちのヒーロー!”とか言っている。その辺の一般人にすら顔と名前が知られているCIAエージェントってどんだけだよ、と言いたくもなるだろう。このあたりの余計なディテールがさらにシナリオを破綻させている。なんと言うか物語に対する熱量が全く上がらない要素ばかりという印象なのである。

 

他にも言いたいことはいくらでもある。一方でここまで文句ばかり書いてきたが、それでもクリアするまでは本作をプレイすることになった。それには購入した作品はクリアまでプレイするという自分の貧乏性な主義によるところが大きいが、同時にやはり誉めるべき点もあると言うことだ。

 

Just Cause3ここがGood①:グラップリングが超快適

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 本作のゲームプレイにおける最大の特徴であるグラップリング。これがもう快適そのもの。マップを移動するにせよ戦闘で使うにせよ3次元での高機動な動きが本当に癖になる。本作の戦闘では敵は放っておくと無限湧きで、ヘリや戦車などもバンバン投入されで火力も銃弾の量もかなりの者なのだが、グラップリングを駆使して戦場を駆けまわり、目標を破壊するカタルシスは相当なものだ。これだけでも本作は一度プレイするだけの価値があると言っても過言ではない。実際グラップリングの要素が無ければクリアするまでプレイすることはなかっただろう。

シューターとしての出来は前述したように誉められた内容ではないのだが、それを補って余りある楽しさがあると言えるだろう。グラップリングにウイングスーツを組み合わせればその機動性はさらに上がる。本作のマップは広く、しかもビークル類の挙動がもっさりしているので移動は結構苦痛なのだが、この組み合わせがあれば無問題。実際ビークルはヘリ以外ほとんど使用しなかった。移動すら楽しいと思わせてくれるこのギミックは出色の出来だと言って良いだろう。

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Just Cause3ここがGood②:メインミッションは楽しませる(ただしプレイ内容限定)

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 本作のサブミッションにあたる拠点解放については内容も変わり映えなく、MAPも使いまわしが多いためはっきり言って単調だ。正直これは『Ghost Recon:Wildlands』も同じでオープンワールドTPSにおける宿命と言ってもいいのかもしれない。

 一方で本作のメインミッションは中々に多様な内容で楽しませてくれた。重要拠点への潜入と破壊のみにとどまらず、要人の護衛や物資の防衛、果ては発射されたミサイルに飛び移って破壊などバリエーション豊かだ。自分はプレイ後半に集中してメインミッションを実行したが、おかげで本作の評価はかなり挽回された。シナリオは破綻しているしストーリーは有って無きが如しだが、プレイ内容そのものは十分に評価に値するものだった。

総論:Just Cause3は”太郎ゲー”だ!

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要は堅苦しく考えることなく、とにかく撃ちまくり、爆破することを楽しむ一種のバカゲーとして楽しむのが本作には一番合ったプレイスタイルなのだろう。

リコ・ロドリゲスと言う無個性なヒーローを操り、思うままに破壊を楽しむことで一種の全能感を味わうと言うべきか。要するにあれだ、イキリ骨太郎とか鯖太郎とか、あの類。所謂太郎系作品に連ねるべき作品だ。悪逆(笑)な独裁者を倒すため、ジャスコ太郎は今日も破壊の限りを尽くす。進め!ジャスコ太郎!君を待つメディチの明日はどっちだ?

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2019年のサマーセールでお値段¥450.この値段なら十分に楽しめる内容。フルプライスでの購入は...ちょっと無いかな。