『Stronghold Crusader2』 バランスとオリジナリティ

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『Stronghold Crusader2』キャンペーンミッションをクリア。所要時間は25時間。Strongholdシリーズをプレイするのは『Stronghold』『Stronghold Crusader』に続き三作目。キャンペーンミッションだけで言えばその3作の中でボリュームは最も小さい作品だった。

シリーズ初期の作品を彷彿させるビジュアル

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本作はプレイ済の2作から10年以上の期間を経てリリースされた作品だが、グラフィックやUIなどの仕様は驚くほど変わっていない。未プレイではあるが『Stronghold2』や『Stronghold3』でユニットが3D化されたり挙動の物理演算が洗練されたことと比較すると、非常に初期の作品に近い雰囲気を感じる。当然リリースされた2014年の作品に相応しい技術的な向上は感じられるが、この意識的とも思える原点回帰なビジュアルやUIは初代のファンから見れば非常に好ましい。いかにも”Strongholdをプレイしている”感が強い。正に実家のような安心感と言うべきだろうか。

RTSとしての質の変化

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一方でRTSとしての方向性にはかなりの変化が見られる。「Stronghold」と言えば”防衛”が売りのシリーズ。内政に努め、城と城壁を築き、敵を迎撃することがその醍醐味なのだが、本作はかなり趣が異なる。全部で11あるキャンペーンミッションのうち、純粋な防衛戦と言えるのは2つだけだ。他には物資調達、攻城戦、防衛と攻城の混合などのミッションで構成され、全体で見れば防衛に偏り過ぎないバランスの取れた構成となっている。

プレイ仕様についても細かな変更点が多数ある。プレイ速度の調整が3段階のみとなったり、敵AI陣営に兵站の概念がなくなる(₌敵が無限湧きする)などだ。指定期間内でのクリアが条件となるミッションも多くなるなど積み上げていくとかなりプレイング・フィールに違いを感じるものとなっている。

あくまでキャンペーンミッションをクリアした時点での感想ではあるが、本作はこれまでにプレイした2作と比較すると、よりRTSとしては兵站・防衛・攻撃のバランスを意識した作品に仕上がっているように感じられた。

薄れるオリジナリティ

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この変化をどのように捉えるかはプレイヤー次第だろう。もともと「Stronghold」はRTSに馴染みのないプレイヤーにも敷居の低いシリーズだが、その一方でそのゲーム性は”防衛”に主眼を置くと言ったアクの強さを兼ね備えている。それがこのシリーズの個性であり人気の理由であったはずだ。しかし本作についてはその個性であった”防衛”の比重が低くなった分RTSとしてはバランスが良くなった一方で、シリーズとしての個性は薄れてしまった印象がぬぐえない。

最も『Stronghold Crusader』の時点で”防衛”の比重は下がりつつあったのも事実で、10年以上の時を経てリリースされた本作についてはバランスのとり方にかなり苦慮したであろうことが察せられる。

問われるシリーズの方向性

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オリジナリティよりもバランスにかじを切った印象のある本作について、STEAMのレビューでは”賛否両論”となっている。それも当然で、本シリーズの個性に重きを置けば本作の方向性は好ましいものではないだろう。一方で本作で初めてStrongholdを体験するプレイヤーにとっては非常に手を付けやすく、難易度も適正な作品であると言える。古参ファンのつなぎ止めと、新規プレイヤーの獲得とどちらに比重を置くべきなのか。その典型的な課題に直面した作品だと言えるだろう。

2020年には最新作『Stronghold:Warlords』の発売が予定されているが、新作ではバランスとオリジナリティ、どちらに比重を置くのだろうか?”防衛”を売りとするアクの強さか?初心者にもなじみやすいバランスの良さか?その双方を充足する作品をリリースできれば間違いなく名作と呼ぶにふさわしい作品となるだろう。

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