『Armored Core for Answer』 闘いの先にある”Answer”

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Armored Core for Answer』をクリア。難易度ノーマルで全エンディング、全ミッション、全オーダーマッチ(カラード&ORCA)クリアで所要時間は32時間。

ACシリーズは去年プレイした『AC4』が初体験だったが、ソウルシリーズとはジャンルも難しさのベクトルも全く異なるその作風が気に入り、続編である本作もプレイすることにした。

 

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 『AC4』のプレイ時間が13時間程度なので、軽くその倍以上はプレイした訳だ。これは本作がマルチエンディングを採用しており、最低でも2回の周回をこなす必要があることもあるだろうが、周回に十分耐えうるだけの内容と言えるだろう。

手応えの増したミッション、癖のある機体とのオーダーマッチ

まずプレイ内容についてだが、本作も前作のシステムを引き継ぎミッション制となっている。与えられたミッションをクリアしていくことでストーリーが進行する流れは本作も同様だ。これはブログでも書いたが、前作『AC4』の場合、各ミッションの難易度がボス的な位置づけである敵AC”ネクスト”の出現如何で大きく変わる。平たく言えばネクストが登場しないミッションは正直簡単で、どのようにカスタマイズした機体で出撃してもまずクリアできない、ということはない難易度となっていた。

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『ACFA』ではこの点が大きく改善されている。特筆すべきは本作で登場した超巨大兵器”アームズフォート(以下AF)”の存在だ。基本的に敵部隊の一掃や、敵ネクストの排除と言った従来の戦闘に加え、機動要塞とも称すべき巨大なAFに愛機を駆って挑むミッションはテンションが上がる。難易度は個体によって様々だが、前作のネクストが登場しないミッションのような軽い難易度ではない。初見ではクリアできなかったミッションも多々あり、ネクスト戦同様機体のアセンに悩みながら攻略する楽しさは格別だ。そして前作同様、平地、高所、閉所、海上など様々なシチュエーションで展開される多様なミッションがこれに組み合わされ、周回に耐えうる実に手応えのあるミッション構成となっている。ミッションの数は若干減ったが、それを補って余りある内容と言えるだろう。

また、今作でも前作のようにネクストを相手とする1対1のモードが実装されている。その「オーダーマッチ」モードでは、本作に登場する”カラード”および”ORCA旅団"に所属するリンクス(ACのパイロット)とその愛機であるネクストと対決することが出来るが、これがまた楽しい。前作のランカーマッチは途中でやめてしまったのだが、本作では色々とアセンを試行錯誤しながら結局全てクリアしてしまった。どのネクストも非常に個性的、というか癖のある機体が多く、機体相性や自分のプレイスタイルを考えながらアセンを組み、それがハマって勝利するのが堪らない。

本作のコンセプトやシステム、更に言えば武器や機体についても前作と比較して大きく変更が加えられているわけでは無いのだが、プレイ内容は『AC4』を着実に発展させた内容となっており、前作をプレイ済ならば是非やるべき作品に仕上がっていることは間違いないだろう。

”答え”の無い戦い

『AC4』、『ACFA』の世界は”国家解体戦争”を経て国家が消滅し、代わりに企業の連合体によって支配されたディストピア的な世界観となっている。この世界の戦争は企業間競争であり、主人公達リンクスは競争の尖兵として企業に雇われる傭兵だ。企業による資源争奪と、そのための争いにより地上は荒廃し、人類の多くが”クレイドル”と呼ばれる空中プラットフォームで生活する時代で、若きリンクスである主人公が傭兵としての一歩を踏み出すところから物語は始まる。相棒であり上官とも言うべき存在のオペレーターと共に、企業から依頼される幾多のミッションを達成して自らの価値を証明する戦いを続けるのだ。

しかし本作は若き傭兵のピルドュクス・ロマンではない。一人の若者の成長を見守っていられるほどこの世界は優しくないのだ。リンクスとして成長する主人公をよそに、周囲の情勢は大きく回転する。世界を支配する企業体、その支配構造に挑戦する”ORCA”旅団。両者の戦いの火蓋が切られる中で、主人公は選択を迫られる。”今”を犠牲に”未来”に賭けるのか?不確実な”未来”を捨て閉塞の”今”を選ぶのか?いずれの選択であれ、そこに明白な”正解”も”過ち”も存在しない。出来るのは自らの選択を、祈りを以て見届けることだけだ。

”Pray for Answer"。

本作のOP冒頭にあるこのメッセージは正に本作のシナリオを一言で表すものだ。この作品にはハッピーエンドもトゥルーエンドも存在しない。自ら出した答にただ祈る。それだけが主人公に許された、勝利の末に獲得した権利なのだから。(ちなみに”バッドエンド”は存在する。これ以上ない程明確な形で)

ディストピアな世界観をハードに描く本作のシナリオは人を選ぶだろう。しかしそのゲーム性と同様にエッジの効いたその物語は深い余韻を残すものだ。『Armored Core for Anwer』、正に名が体を表す素晴らしいタイトルだと思う。

姿なきキャラクターが物語を彩る

ストーリーについての感想を述べた後では蛇足の感があるのだが、物語を彩るキャラクター達の個性も強く、実に魅力的だ。本作では主人公やオペレーター以外にも時に味方、時に敵となるリンクスの面々や、ミッションの仲介人など多くのキャラクターが登場する。

面白いのはこれらの面々、ビジュアルは一切登場しない。全て声だけの登場である。しかもリンクスの面々は、各ミッションで相対した時に交わされる通信での会話だけでしか登場しない。

それなのにこの面々のキャラの濃さはどういうことだろうか?特にリンクスの面子はそれぞれの愛機に負けず劣らず個性が強い。寧ろ愛機との相乗効果と言うべきなのだろうか?もともとフロム・ソフトウェアの作品は、ソウルシリーズをはじめとして、物語もキャラクターも語られることがあまりに少ないのが常套手段だ。僅かな会話と機体の構成、そして戦闘スタイルでキャラクターを描くスタイルもその伝統に沿ったものと言えるだろう。おかげで妄想も考察も捗ることこの上ない。

中でも印象に残るのは、やはり相棒であるオペレーターのセレン・ヘイズだろう。その正体が前作で名前のみ登場した元オリジナル・リンクスという設定だけでも相当だが、辛辣かつ攻撃的で口が悪い。ミッション失敗の際には容赦なく罵倒が浴びせられる。半面主人公の無茶に慌てたり、ミッション成功時に「かっこよかったぞ」とか言ってくれたりなど、いやもう振れ幅が大きすぎて萌えること仕方ない。

主人公との関係は姉弟のようであり、師弟のようであり、上官と部下のようでもあり、と中々に複雑。しかし常に主人公を見守り、尊重するという頼りになる女性だ。バッドエンド以外の2つのエンディングにおける主人公の選択に対する立ち位置がそれを表している。プレイ開始当初はなんだこの女、と吐き捨てたくもなる相手が、エンディングの時点ではかけがえのないバディとなっていた。その相手と敵として対峙するルートを作るあたり、やはりフロムは鬼畜と言うべきだろう(これ以上ない賞賛)。

このまま消えるには惜しすぎる

『AC4』も素晴らしい作品だったが、『ACFA』はそれを更に上回る傑作だった。ゲーム性もシナリオもこれ以上なく個性的で質が高い。本稿ではあまり触れなかったが、星野康太氏によるBGMも最高の出来だ。正直この2作のBGMはこれまでにプレイした作品の中でも群を抜いて素晴らしいと思う。

ACシリーズはこの後『ACV』と『ACVD』が残っているが、いずれプレイすることになるだろう。しかし『ACVD』がリリースされた2013年以降、本シリーズは音沙汰無しの状態が続いている。

”AC新作”が最早ネットミームの一つとなって久しい状況だが、正直このままニュースもなく消えていくにはあまりにも惜しい。実際にプレイするとこれだけACの新作についての声が絶えない理由が良くわかる。ACのような作品は敷居が高く、結局セールスが見込みにくいと言うのが大きな理由なのだろうが、過去作のリマスターでも何でもよいので何らかの形で存続を願ってやまない作品だ(無論新作であれば最高だ)。