『Crysis』 うわっ…私のナノスーツ、弱すぎ…?

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『Crysis』をクリア。難易度はノーマル。所要時間は16時間。2007年にEAから発売された作品で、シングルプレイのみをプレイ。シナリオは一本道なのでボリュームは妥当なものだろう。シングル用のFPSはこれまで『Wolfenstein』や『METRO』、『S.T.A.L.K.E.R』などのシリーズをプレイしたが、それらの作品と比較した本作が持つ特徴なり魅力について語っていきたい。

 

 

 ナノスーツを駆使して戦場を切り開け!と言いたいところだが...

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本作のプレイにおける最大の特徴は「ナノスーツ」と呼ばれるパワードスーツの存在だろう。ナノスーツは一時的に各機能を最大限に増幅する機能を有しており、プレイヤーは状況に応じてその機能を使い分けて状況を切り開いていく。その機能は「アーマー(防御力の向上)」「ストレングス(ジャンプ力等筋力の向上)」「スピード(速度の向上)」「クローク(光学迷彩)」の4種類。いずれも効果時間は短いものの、これを各場面で使い分けてのプレイが本作の大きな特徴と言えるだろう。

こう言ってしまうとナノスーツが非常に便利な装備のように聞こえるのだが、実際にプレイすると少々勝手が異なる。はっきり言ってしまうとナノスーツの各能力を使用していない時のスペックが低すぎるのだ。装甲は紙で被弾すると秒で溶ける、ジャンプはちょっとした段差を超えるのも一苦労、近接攻撃は敵を怯ませる程度でQTEも出来ない、移動速度はダッシュでもケツを蹴り飛ばしたくなるほどの鈍足だ。『Wolfwnstein』のB・Jなら生身でもフルスペックのナノスーツ張りのパフォーマンスを見せるだろうに、と何度も思ったほどだ。

要するにこのナノスーツ、使用していない状態でのスペックが甚だしく低い状態がデフォルトであり、それを一時的に増幅させることで状況を打開すると言うのが実態だ。このあたりの仕様は人によって好みが別れるだろうが、一つ言えることはそれでもスーツの機能を使い分けないと難易度はかなり高い。序盤はそれで非常に苦労した。使い分けに慣れていくにつれてサクサクと進行するようになったあたり、バランスの調整はなかなか優れている。

中でも光学迷彩である「クローク」の仕様が非常に良い。便利だが便利過ぎない。クローク状態で移動しているとすぐにエネルギー切れで迷彩が解けるが、移動しなければ有効時間は長く、一方で攻撃するとその瞬間に迷彩は解ける。この特性を踏まえてクロークを使用することでかなり効率的なプレイも可能となるが、便利過ぎてクローク無双なゲームにも堕していない。実に良いバランスだ。

素の状態でのスペックが低すぎる点が名前負けしている感は強いのだが、純粋にプレイ面で見れば、ナノスーツの機能を使い分けることによりプレイの幅が広がり、同時に優れたバランス設計をもたらしていると言えるだろう。

一本道FPSにおける”自由度”

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純粋に戦闘に限っての事ではあるが、本作の自由度は他の一本道FPSに比べると比較的高い。そもそも一本道FPSに自由度などあったものか、という指摘もあるだろうが、あくまで戦闘に関しての事だ。

これは舞台となる南国の孤島が、高低差が大きく丘陵や河川、山岳地帯と豊富な地形のバリエーションを持ちデザインされていることが大きい。そのため各Chapterでの目標となる拠点へ進む際にも、単にごり押しかステルスか、という選択だけではなく、複数のルートから侵攻ルートを模索し、最適な戦術を検討するという意味でプレイの幅が広がる。この選択の幅こそが戦闘における”自由度”というものだろう。今回プレイした際は比較的標準的なルートを選択したと思うが、おそらく各Chapterでもっと多くの選択肢が潜んでいることが十分に知覚できるデザインとなっていた。繰り返しプレイをすればおそらくその点も確認できるだろう。

ただ残念なのは、この自由度が活かされるのは中盤までの北朝鮮軍を相手にした戦闘に限られている。それ以降のエイリアンを相手とした戦闘ではそこまでの自由度は存在しない。サブクエストをこなすか否かの選択程度だろう。それ故に終盤のプレイがやや単調に思えてしまったのもやむを得ない点だろう。

当時としては美麗な映像

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本作は2007年発売の作品であり、CS機で言えばPS3の初期にあたる時代の作品だ。そう考えればイベントシーンにせよプレイ画面にせよグラフィックの質は相当に高い。現在の技術レベルと比較してはいけないが、それでもグラフィックの面での古臭さゆえにプレイを敬遠する理由には該当しないだろう。

一方でその美麗なグラフィック故だろうか、プレイ中にカクつく場面が結構気になった。特に大型のエイリアンとの戦闘場面ではかなりの頻度でカクつきが発生した。自分のPCスペックはゲーミングPCとしてはミドルエンドレベルなので、本作の要求スペックを充分に満たしているはずなのだが、この点はプレイしてかなり気になったところだ。

総評とPC版についての注意

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総じて言えばシングルFPSの良作と言える作品だった。爽快、快適なプレイング・フィールとは言い難いが、ナノスーツの使い分けとそれを充分に活かせるマップデザインを備えたやり応えのあるFPSと言えるだろう。

今回プレイしたのはSteam版だが、Steam版でのプレイには幾つか注意があるのでその点も記しておく。

まず日本語は未対応。日本語化は可能だが、EA Originのアカウントが必要であり、難しくないが少々手間がかかる。

また、基本的にはキーボード&マウスでの操作が前提。パッド設定も一応あるが、かなり使い勝手が悪い。(武器の弾薬変更ができなかったり匍匐が出来なかったり)

更に終盤でCTDやセーブデータの破損に悩まされた。これはクライアントに依存する問題の可能性もあるが、コミュニティを見る限り同様の例は少なくないようだ。

Steamで本作を購入する際には上記の点に注意しておくと良いだろう。

ちなみに本作は先日リマスター化が発表されたのだが、どの程度の見込みがあるのか少々気になる。確かに面白い作品だったが、同時に年月相応の古さも感じる作品でもある。思い出補正で食指を伸ばす層を超えて訴求することが出来るのだろうか?この点もまた気になるところだ。

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