『Swarmlake』 在宅勤務の敵

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『SWARMLAKE』をプレイ。実績コンプまでの所要時間は2時間程度。以前感想を書いた『Refunct』の製作者、Dominique Grieshofer氏による2019年に発売された最新作。

『Refunct』はとても個人製作とは思えない驚異的なクオリティの作品だったが、今回もそれに劣らない作品を送り出してくれた。

 

正に天才の御業

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本作を起動すると、スタートメニューを選択することもなくいきなりプレイ画面に放り出される。脇に表示されたシンプルな操作説明を見ながら周囲の空間を飛び跳ねていると唐突にゲームスタートだ。

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ゲーム内容はシンプルそのもの。周囲から攻め寄せる敵をひたすら撃つ。倒した敵が落とす緑色の物体を集めてスコアを増やす。ただそれだけ。

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それだけなのだが敵の数が尋常ではない。最初こそ銃で一掃できる程度の数だった敵は、いつの間にか加速度的にその数を増やし、やがて画面を埋め尽くす。四方八方から押し寄せる無数の敵に触れれば即終了だ。

この単純なゲーム性の中に、製作者の才能が高密度に凝縮されている。まず驚くべきがプレイの快適性。恐ろしい程の数の敵に埋め尽くされる本作だが、プレイ中にカクつきなどは一切感じなかった。しかも本作インストール容量は僅か20M程度。さらに言えば『Refunct』ではUnreal Engineを使用していたゲームエンジンも、本作では自作してしまったという。一体なんと言う才能であることか。

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更に製作者の才能は開発者としてのそれだけに留まらない。ゲームプレイにおける本作の特徴は、その恐ろしい程のシンプルさだ。タイトル画面もなし、チュートリアルもなし、ストーリーも背景設定もなし、正にないない尽くしの1作なのだ。

これが何を意味しているかと言うと、正にリプレイ性の向上だ。本作はスコアアタック型のFPSであるため所謂ゲームクリアというものは存在しない。そのため作品に必要とされるのはプレイヤーが何度もプレイに挑み続けるモチベーションだ。本作はリプレイ性を阻害するものを極限まで切り捨てることでそれを実現している。

リプレイ性を向上している要因は、余分な要素の切り捨てだけではない。BGMもそうだ。前作『Refunct』のBGMも素晴らしいものだったが、本作のBGMも最高だ。そのドライブ感はプレイ中に思わずトリップしてしまいそうなほどの高揚感をもたらしてくれる。しかしそのBGMの使い方がまた秀逸なのだ。本作はゲームオーバーになると、その画面から再度リプレイする形式なのだが、リプレイするとBGMは冒頭からではなく前回ゲームオーバーした時点のパートから再開される。つまりリプレイしながらもプレイが継続している感覚を覚える仕掛けとなっている。これもリプレイを如何にスムーズにプレイできるか、という点を考慮した演出なのだろう。

これらの点はスコアアタック型FPSという本作のゲームスタイルを踏まえた優れたゲームデザインだ。製作者のゲームデザイナーとしての優れた才能が良く伺える。

開発者、そしてデザイナーとしての稀有な資質を併せ持つDominique Grieshofer氏がその才能を如何なく発揮した一作。それが『SWARMLAKE』だ。

 

スコアアタックは在宅勤務の敵

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ここまでに書いた通り『SWARMLAKE』は技術面、デザイン面、そして演出の面でも非常に『良く出来た』作品だ。しかし『良く出来た作品』と『面白い作品』は必ずしも一致しない。例えば前作『Refunct』は優れた品質の作品だが、『面白い作品』あるいは『楽しめる作品』か?と問われると疑問が残る。

しかし本作については心配無用。『良く出来た作品』であり『楽しめる作品』だ。押し寄せる敵を時に迎え撃ち、時に回避しながらフィールドを縦横無尽に動き回り、ひたすらスコアアタックに没頭する。この繰り返しはかなり中毒性が高い。最初は精々300程度だったスコアも、リプレイを繰り返すうちに1000、2000と上がっていく。そうなるとまた次のハイスコアを目指して指が止まらなくなってしまうのだ。本作の実績はスコアの到達だが、10000点を超えると実績がコンプとなる。ついついそれを目指してしまう自分を誰が責められよう。

1プレイの短さもまたリプレイを助長する。目安となる10000点でも3分程度。ちょっと空いた時間の箸休め的に起動してしまうとついついプレイを繰り返してしまう。時勢柄、在宅勤務をこなす諸兄は決して手を出してはならない作品だ。仕事の邪魔となる点については保証付き。くれぐれもご注意を。

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(2020年11月18日追記)

『Swarmlake』の紹介動画をYoutubeに投稿しました。

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