『Salt & Sanctuary』 ”2D版ダークソウル”、その真価は”カジュアル”にあり!

f:id:Martin-A:20200701085330j:plain

『Salt&Sanctuary』をクリア。1週目クリアまでの所要時間は25時間。

巷では”2D版ダークソウル”との評価が高い作品。ソウルシリーズのファンとしてはいつかプレイしなければと思っていた作品だ。

実際にプレイすると2Dアクションという形式の差は有れど、なるほどこれは”ダークソウル”だと感じずにはいられない要素に満ちている。敵を倒すことで獲得する”ソルト”をキャラクターや武器の強化に使用、死亡することでソルトを失い、その状態で再度死亡することで永久にソルトをロストするデスペナルティ、ダークでグロテスクだが、一方で静謐さも感じさせる世界観、”篝火”に該当する”サンクチュアリ”の存在、自由度の高いビルド、各種のアイテムに用意されたフレーバーテキスト、一定の攻略自由度が保証された探索度の高いマップデザイン、うかつな行動が即死亡に繋がる敵の配置など、いずれもソウルシリーズが嚆矢として形式化された”死にゲー”のデザイン。3Dと2Dというフォーマットの差は有れど、愚直なまでに忠実にそのデザインを再現した作品だ。

f:id:Martin-A:20200701090356j:plain

そして、それが単なる形式の模倣に堕していない。そもそもソウルシリーズが開拓したフォーマットは単なる形だけの模倣が非常に難しいスタイルだ。難易度の高さが最早前提としてとらえられるその形式の肝は、上に挙げたような要素を詰め込むことではない。真に困難な要素はゲーム作品としてのバランスだ。ゲームプレイの難易度一つを取っても、最初はとてもクリアできない程に感じられるが、プレイを繰り返すことでプレイヤー自身がスキルを高め、最終的にクリアに導く。この匙加減が非常に難しい。徒に難易度が高いだけでは意味が無い。超絶技巧的なプレイヤースキルが絶対的に求められるわけでは無く、時間と根気があれば大多数のプレイヤーがクリアが可能で、それでいて簡単とはみなされない程度の難易度、同時に戦術的(脳筋でもよし純魔でも良し、Hit&Awayでもよしガン盾でも良し、といった)な多様性を併せ持つ、そのような実に職人的なデザイン・センスを実現したのが”ソウルシリーズ”であり、そのフォーマットなのである。

f:id:Martin-A:20200701092415j:plain

本作はそのバランス調整における品質の高さも含めて”ダークソウル的”と呼ぶに相応しい作品だ。ステージ攻略においてもボス戦においてもその難易度は絶妙で、まさに”死に覚え”ながら攻略をする、あのダークソウルの感覚に非常に近いものを感じることが出来た。また、ゲームプレイの難易度のみならず、再帰性を備えた自由度を持つマップの探索や、メインシナリオの脇を固めるNPCイベント、コレクター心を擽る武器強化システムなど、ソウルシリーズプレイヤーならお馴染みのあれこれが違和感なく実装されている。本作独自の要素である宗教システムなどは本家に逆輸入してほしいと思わせる内容だった(少々面倒ではあるが)。

f:id:Martin-A:20200701093745j:plain

本作のバランス・デザインで最も秀逸に感じるのはそのカジュアルさだ。ソウルズライクと称されながら、カジュアルさを評価するのは矛盾に感じられるかもしれないが、実のところ本作は本家ダークソウルほどに”コア”な作品ではない。ゲームプレイの難易度も本家に比べればかなり易しいと言える。ビジュアル面においても2Dのドット絵風にデフォルメされたデザインは、作品の持つダークでグロテスクな雰囲気を緩和する方向に働いている。

これはつまり本作が、単にダークソウルを2Dのフォーマットに嵌め込んだだけの作品ではなく、ゲームプレイやビジュアルの面でもカジュアルなレベルにバランスを再デザインされた作品であることを意味している。それでいてソウルシリーズの本質的な面白さを高いレベルで備えていることは実に驚異的だ。

f:id:Martin-A:20200701094234j:plain

敢えて欠点らしきものを指摘するならば、物語的な側面では本家程に考察のし甲斐があるシナリオではなく、ゲームプレイの添え物程度であることくらいだろうか。フレーバーテキストについても形式だけ本家を模倣した同人作品感が強い。

しかしこれらの要素すら、カジュアルなプレイ感を考えれば適当なものだろう。実のところ ”2D版ダクソ”の評価が高い本作だが、真に評価すべきはそのカジュアルさだ。ソウルシリーズの本質的な魅力を損なうことなく、プレイ面、ビジュアル面、シナリオ、雰囲気をカジュアルに再構築したそのデザイン力の高さだ。

本家ソウルシリーズに興味はあるが、”死にゲー”の評判に二の足を踏むプレイヤーが手に取るには格好の作品だ。そして同時に本家ソウルシリーズのファンでも十分に楽しめるだけの品質を兼ね備えている。この敷居の低さと間口の広さは本家を超えていると言っても過言ではないだろう。

”2D版ダークソウル”。その評価は正に疑いなく正しい。そして同時にそれだけにとどまらない作品と言えるだろう。

f:id:Martin-A:20200701095032j:plain

現在は2週目をプレイ中。2週目ではボス戦のノーダメージプレイにも挑戦している。5体目までは倒せたが、ほかのゲームを始めたので中断している。いつになるか分からないが、全て倒せたら動画を公開したい。

f:id:Martin-A:20200701095301j:plain