『Blueprint Tycoon』 安価で楽しめるカジュアルな産業シム

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『Blueprint Tycoon』をクリア。チュートリアルを含む6シナリオが対象。所要時間は18時間。日本語化はされていないが、それほどプレイに支障は感じなかった。

従業員を雇い、産業を育成し、物流網を整備して収益を上げる、所謂産業シムな作品。Steamのレビューを見ると『Factorio』の簡易版と言った評価も見受けられるが、生産ラインの構築に特化した『Factorio』とは異なり、物流から販売までのプロセスが対象となっており、一方で生産ラインも物流も基本的にマンパワーでの管理となっているなど一概に類似品という訳でも無い。特に人的資源の管理が重要な点などは『Factorio』との大きな違いと言えるだろう。

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産業系シムとしてサプライチェーン全体を対象としているが、先に挙げた『Factorio』や『Sim City』などと比較すると抽象度が2段階ほど高いデザインとなっているので複雑さは無く手軽に楽しめる作品だ。産業を育成して収益を上げつつ、資源を投入して研究を進め、新たな産業を開放する点など、産業シムとして定番な仕様も抑えつつ、研究のレベルは最大4階層と浅いものなので非常にカジュアルな造りとなっている。

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一方でゲームプレイについては中々シビアなデザインとなっている。一般的な産業系シムのように事業やリソースを拡大し、出力なり収益を最大化していく、というのは難しい内容だ。そもそもマップがそれほど広くなく、施設を配置可能なスペースが限られているため、無秩序な拡大は出来ない設計となっている。更に人的資源についても、専門性の高い職種程、そのランニングコストが非常に高く、規模の拡大が困難な造りとなっている。

基本的に限られたエリアや資源の中で、入力と出力の最適な均衡点を見出し、効率的に維持していくことが本作の特徴と言えるだろう。『Sim City』や『Cities Skylines』で初期エリアのみを使用してどこまで都市を発展させられるか、という縛りプレイがあるが、あれをよりカジュアルにした作品と言うのが近いかもしれない。

最適な均衡点を見出したとしても、それは一時的なもので、研究が進み、新たなミッションが課される毎に施設や道路の再配置を行い、再び均衡点を模索することになるので意外に忙しい。効率的な配置が出来たと思ったのもつかの間、従業員への資源供給が不足したり、廃棄物処理の速度が生産のそれに追い付かず、生産が停止したり、中間財の不足で完成品の生産がストップするなど様々なボトルネックが発生し、その対応にも追われることになる。非常にシンプルでカジュアルなデザインだが、産業Simとしてのツボが良く抑えられており、良く出来ている。

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驚くべきはその価格で、今年のサマーセールでは¥70、なんと100円でお釣りがくる価格だ。定価でも¥300未満。この価格であれば大満足な内容だ。

惜しむらくはシナリオ数が少ない点。この倍のシナリオがあれば更に良かったが、流石にこの値段でそれを求めるのは無理が過ぎると言うものだろう。

低価格でカジュアルな作品で、しかも中々に出来が良い作品なので、産業Simの未経験者が最初にプレイする作品として相応しいだろう。

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