『Stronghold2』 個性とバランスの両立は難しい

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『Stronghold2』の軍事キャンペーンをクリア。プレイ時間は36時間。

『Stronghold』シリーズについてはこれまで『Stronghold』『Stronghold Crusader』『Stronghold Crusader2』をプレイ済。各作品についての評価は以下の記事を参照。

 

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 リリース順としては『Stronghold Crusader』の次に当たる本作についての感想を書くにあたり、過去作についての記事を読み返してみたのだが、図らずも『Stronghold』シリーズの変遷について再確認する結果となった。

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過去にプレイした『Stronghold』シリーズ3作品と比較しての本作の特徴は、そのミッション構成にある。ミッション単位にプレイが区切られ、定められた目標を達成することでミッションクリアとなり、次のミッションに進む形式であった他の作品とは少々趣が異なる。本作ではチャプター単位にプレイが区切られており、各チャプターが幾つかのミッションで構成され、ミッションをクリアする毎に次のミッションに移行する。そして次のミッションへの移行に際しては、前のミッションクリア時の状態がそのまま維持される、と言った仕様だ。

チャプターは全12章で構成されており、他の作品のミッション数と比較するとその数は少ないが、複数のミッションで構成されたチャプターが多いので総プレイ時間は他の作品とそれほど変わらず、ボリュームについては見劣りしない。

一方でチャプター単位のプレイ時間が長くなっており、個人的には冗長に感じられたことも否定できない。

何よりこのプレイ構成の変化が『Stronghold』シリーズの辿る変遷を良く表していると感じられた。

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これまでの記事でも書いたように、『Stronghold』シリーズの個性にして最大の売りは、”防衛”に主眼を置いたRTSであると言うことにある。名は体を表すというが、これほど分かりやすいタイトルもそうないであろう。

しかし一方で『Stronghold』シリーズの変遷とは、正にその個性を薄めていく過程と言わざるを得ないのである。

もともと初代『Stronghold』にも幾つかの攻城ミッションが含まれているのだが、他のミッションと比較しても難易度が高く、防衛ミッションと比較してもそれほど楽しめる物であったとは言い難い。しかしその後プレイした『Crusader』、『Crusader2』と順を追う毎に攻城戦の比率は高まっていく。『Stronghold Crusader』の軍事ミッションでは、プレイヤーは獅子心王リチャードとサラディンの両陣営でのミッションをプレイすることになるが、サラディン側のミッションは全て攻城ミッションである。そして本作の次にリリースされる『Stronghold Crusader2』において、純粋な防衛戦と呼べるミッションは僅か2つ程度となってしまうのである。

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プレイした作品では3番目のリリースにあたる本作もその流れにある。多くのチャプターでは防衛ミッションと攻城ミッションのハイブリッド構成となっている。内政の一方で敵の攻撃から城を防衛しつつ、反転攻勢に出て敵城を攻め落とす、あるいは攻城ミッションの達成後にその城を防衛するミッションに移行する、と言った内容だ。全12チャプターの中で純粋な防衛のみのチャプターは一つ、逆に内政すら出来ない純粋な攻城チャプターの数は3つ。比率から言っても既に”防衛”が売りのRTSと言うのは難しい構成となっている。

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実のところこの変遷について、開発者の立場から考えると分からなくもない。あくまで個人的な感想ではあるのだが、「防衛だけでは飽きられる」という思いがあったのではないだろうか?初代『Stronghold』が高く評価され、セールス的にも成功を収めたからこそのシリーズ化ではあったものの、続編を開発するにあたりその方向性について、開発元であるFirefly Studioは作品の本質的な個性を強調、純化させるよりも、より大きな視点でRTSとしての完成度を高めることを重視したように思えてならない。

プレイ単位をミッションからチャプターにして、1プレイの中でプレイの幅を広げる、防衛と攻城、内政のバランスを取る、いずれもRTSとしての品質や完成度を上げる試みであり、「ただ守るだけの作品ではない」と主張するに十分な内容だ。実際RTSというジャンルで見た場合、作品を経る毎にそのバランスは良くなっていると思う。

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しかし、である。問題なのはファンが『Stronghold』に求めるのは「ただ守るだけの作品」だったりすることなのだ(正確に言えば”内政”と”防衛”だけがやりたいのだ)。

この辺の「開発者が目指すもの」と「ファンが求めるもの」の相違と言うのは難しい。開発側としては、よりバランスの取れた作品を作り、カジュアルな層にもリーチすることを目指したとも考えられるが、結果としてはコアなプレイヤー層を徐々に離れさせることになってしまったのではないかと感じる。

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本作のプレイについて、自分は十分に楽しめたとは思うのだが、『Stronghold』シリーズ通じて一番楽しめたのはやはり初代『Stronghold』であると言わざるを得ない。初代をプレイしたのがせいぜい2年前なので、思い出補正と言うこともないだろう。作品としての品質であったり、RTSとしてのバランスと言う点では初代は後続の3作品には及ばないかもしれない。しかしとにかくエッジが効いている作品なのだ。『Stronghold』というゲームは守ってナンボなのだ、ということを存分に味わえるのだ。そんなエッジが後続の作品ではどんどん薄れている気がしてならない。

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来年早々には最新作『Stronghold Warlords』の発売が予定されている本シリーズだが、現時点では発売早々の購入は見送る予定。舞台を中国に置いた外連味のあるトレーラーも見てみたのだが、自分がこのシリーズに求めているものがそこにある気がしない(今のところは)。あくまで1ファンの切なる願いではあるが、防衛に軸を置いた原点回帰な作品にもう一度取り組んでほしいものである。

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