『OpenTTD』”不自由”を楽しむ

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OpenTTD』をプレイ中。物流系のシムをプレイしたくなったのだが、Steamウィンターセールまで残り僅かな今の時期は購入するタイミングが良くない(オータムセールでは基本購入しないので)。とりあえずセールに向けてゲームを見繕っていたところに本作の情報に触れ、プレイしてみることにした。

本作は1994年に発売された物流シム『Transport Tycoon Deluxe』のゲームエンジンを用いて開発されたフリーゲームで、ネットでの評判も上々。物流に焦点を当てたシムはこれまでそれほどプレイした経験が無かったので、とりあえずのお試しプレイだ。

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本作の基本的なコンセプトは物流シムとしては非常にオーソドックスなもののようだ。マップの各所に街と産業(1次産業と2次産業)が配置されており、それらの間を結ぶ物流網を整備して、車両を配備して産業を回す。輸送による収入で事業を拡大し、商品を運ぶことで街の人口を増やしていくのが基本的なプレイの流れだ。

オーソドックスであるのも当然の話で、本作の元となった『Transport Tycoon』をはじめとする同時期のシム系作品が、今に至るまでの物流系シムの源流となっているからだろう。プレイヤーが繋げる産業も林業、炭鉱、製鐵、農業、旅客など多岐にわたり、物流を構築する手段も自動車、列車、船舶、航空機と一通りが備わっている。『Transport Tycoon』が1994年、本作が2011年のリリースだが、物流シムに求められる要素の大部分は本作に既に備わっていると感じた。

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グラフィックについてはスーファミ世代には懐かしさを感じさせるもので、この点は現在の物流シムとは比べるべくもないが、このドットで表現されたマップで自らが敷いた道路や線路を車両が目まぐるしく動き回るのを眺めるのは中々楽しい。列車や船舶、航空機の種類も中々豊富で、スペックも細かく設定されているので選ぶ楽しみもある。車両についても同様の豊富さがあれば尚良かったが、それはちょっと贅沢な要望というものだろう。

経営シムとしても中々に細かく、収益状況を睨みつつ事業計画を建て、必要に応じてローンを組んで事業を拡大していく。維持費の管理や各路線の採算を見ながら収益を伸ばす方策に頭を悩ませる。産業シムとして基本を押さえており、なかなかの出来栄えだと思う。

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とは言えやはり15年以上前の作品を基にした内容なので、近年の物流シムと比較すれば不自由さの多い作品でもある。升目状に作られたマップで敷くことの出来る道路や線路のパターンは非常に少なく、思ったようなラインを描くのはなかなか厳しい。ちょっとした段差のせいで路線の整備を邪魔されることもしばしば。車両管理についても融通が効かない。

(しかし列車の信号管理についてはかなり細かく管理可能。年代を考えれば出色の出来と言っても良い)

とは言え本作についてはそれを不満として抱えてプレイする作品ではないだろう。少し前に批評を書いた『トロピコ1』もそうだが、このようなクラッシックな作品では不自由な点こそ楽しむべきポイントだ。思い通りにもゆかず、そもそもやれることも多くない。だからこそ腰を据えて、同時にのんびりと楽しむのが吉と言うべきだ。やれることが多いということは、裏返せばやることに追われるということであり、『トロピコ1』や本作で味わうようなプレイ感覚は、現代の最新シムではなかなか味わえないものだろう。

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最初のプレイは20年程で会社の資産が100万ドルまで貯まった。手探りで進めたせいでそろそろ鉄道網の管理が厳しくなってきたので一旦これで終了。次のプレイではもう少しマップ全体を眺めて計画的にすすめたい。