『Project Nimbus』 ACライクな高機動ロボットアクション、そして”ロボ×美少女”は国境・文化を超える...

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『Project Nimbus』のキャンペーンモードをクリア。所要時間は11時間。

Armored Core』テイストなゲームをプレイしたくて今年のサマーセールで見繕ったうちの1本。結論から言えばかなり満足できた。何せ比較対象がAC、それも自分がプレイしたのが”4系”の2本と”V系”の2本という、いずれもロボットアクションとして最高レベルに評価が高い4作なので、正直どこまで楽しめるかと思いつつのプレイだったが、なかなかどうして良い作品だった。

高品質に纏められた良作。

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AC以外のロボットアクションはそれほどプレイしていないので、どうしてもそれと比較しながらの感想となるが、操作感は4系のACに近い。高速・高機動、動きが軽快で敏捷性が高く、非常に爽快感がある。ロックオン式の攻撃なので、この機動性でもストレスなく敵に弾を当てることが出来て、プレイの快適さを阻害しない。

それでいて難易度はそれなりに高い。ブーストの管理は結構厳しめに設計しているので、気ままにブーストし続けるとエネルギー切れで極端に機動性が落ちる。また、敵機の数が多く、ミサイルを中心とした弾幕はかなり厚い。フレアやブーストを駆使して回避を心掛けないとアーマーをゴリゴリ削られる。このあたりはACをプレイしていなかったらかなり苦労しただろうと感じる。

もっとも難易度の部分にはかなり気を使っているようだ。プレイ難易度は3種類用意されているほか、長めのミッションにはチェックポイントがあり、撃墜された場合でもチェックポイントからアーマーフルの状態でのリプレイが可能となっている。正直幾つかのミッションはこの仕様が無ければかなり厳しかったと思う。

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総じてロボットアクションとしては非常に高品質に仕上げられた良作だと思う。個人的にはプレイングフィールと難易度のバランスが非常に良い作品だと評価できる。操作感は爽快だが、簡単にはクリアできない難易度。それでいてリプレイにストレスがかからぬよう設計できており、そのバランス設計は非常に優れている。ACから流れてきた身としては、やはりこのくらいの難易度を求めたいのである。

本作の評価を見ると、どうにも自分と同じようにACテイストな作品を求めたプレイヤーからの評価が厳しい傾向にあるようだ。ACのように自機をカスタムすることで、様々な戦術、戦法でプレイするタイプの作品ではないので、そのまんまのACを求める向きには不満を感じる点があるのは理解できる。しかし本作はそもそもACではない。ACを意識せず、一つのロボットアクションと見れば、非常に優れた作品だ。原理主義から離れてプレイを楽しむのが正解だろう。

国境・文化を超えるロボット・アニメのテンプレート

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キャンペーンモードのシナリオについて、それほど語るべき内容は無い。個人的にはプレイしたACの4作品、特に”4系”の2作が秀逸に過ぎたため、流石に比較対象とするのは厳しいだろう。ロシアとアメリカを中心とした2大国家に集約された世界体勢を軸とした世界観は、ありがちながらも中々魅力的だが、何せボリューム不足のため書き込みが絶対的に足りず、マクロとミクロの両面において消化不良だ。

本作のシナリオで注目したのはその内容と言うより、本作がタイのデベロッパーの作品であるということだ。非常に乱暴に言ってしまえば、本作のシナリオは「美少女×ロボット×リアルorハードな世界観」という近年における日本のロボットアニメのテンプレート上にある内容なのだが、驚くほど違和感が無い。正直プレイしながら本作が海外のデベロッパー作品であることはほとんど意識しなかった。このテンプレートは『エヴァンゲリオン』だったり『トップをねらえ!』だったりと、枚挙に暇がない日本産のものだと思うのだが、それが文化の異なるタイという国で吸収され、ここまで違和感の無い作品に昇華されたというのは結構な驚きだ。単に代表的な作品が愛好されるだけでなく、それらを消化して軌を一とする新たな作品を生み出す、というのは文化の伝播としてレベルが一段階上がった証左でもある。クリエーターが優秀だということも当然あるだろうが、このテンプレートが既に国境を越える力を持っていることを改めて知らされた作品だ。しかしまあ何故タイという国から、ここまで高品質のロボットアクションであり、同時に”美少女×ロボット”という萌え度の高さを組み合わせた業の深い(誉め言葉)作品が生まれたのか、正直その点については気にならずにいられない。

次回作にも大いに期待

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冒頭でも述べたように、ACテイストを期待してプレイした本作であったが、十分に満足なプレイ内容だった。何より本作が日本産ではなくタイ産と言うのが嬉しい。ロボットアクションという、必ずしもメジャーではないジャンルについて、海外からこれだけ高品質な作品がリリースされるのならば、ACの新作が出ない現状においても希望を持ち続けられるというものだ。

本作については続編である『Nimbus Infinite』のリリースが今年発表されている。発売時期はまだ未定だが非常に楽しみだ。品質も内容も今作を上回る出来を期待したい。個人的には今作は基本的に空中戦、ドッグファイトが中心であったので、地上戦や屋内戦などマップの多様度を増やしてもらえるとありがたいところ。

期待して待ちたい。