アナザーストーリーズ「ゾンビ誕生の衝撃~なぜ世界は恐怖したのか?~」

普段は見ていない番組ですが、番宣でジョージ・A・ロメロの名前をみて視聴。ゾンビとその生みの親であるロメロについて、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』脚本家ジョン・A・ルッソ、『ドーン・オブ・ザ・デッド』特殊メイク担当トム・サヴィーニ、そしてゲームクリエイター三上真司(『バイオハザード』シリーズ)の3名が語る構成となっています。ロメロ本人の視点からの解説や言及はほとんどなく、あくまでスタッフ、フォロワーである3名の視点で構成された番組でした。

少し意外だったのは『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』と『ドーン・オブ・ザ・デッド』の間は10年も空いているのですね。どうも前者はリメイク版の印象が強くオリジナル版は1回程度しか観たことがないので、つい両作品にそれほどの開きがあると聞くと意外に思えてしまいます。(Wiki見ればわかることなのですが)

ルッソの語る『ナイト~』撮影の経緯など個人的には初めて聞く話でしたのでその点は見て損はないかもしれません。サヴィーニのパートは彼の個人的な経験とゾンビ映画との関係を自身の口から語るもので、内容としては重いですね。ベトナム戦争での従軍カメラマンだったという彼の経験が『ドーン~』の特殊メイクとして反映されている、という書き方では軽すぎで、なんと言うべきか分からないのですが、特殊メイクアーティストとして「死」を描くことが、ベトナム戦争で負ったトラウマに対する癒しのようなものであったというのは皮肉というべきなのか、感動すべきなのか反応に困りました。三上真司のパートはそれほど語るべき内容はありませんでしたね。

ロメロのゾンビ映画に秘められた意図やメタファーなどについては語られているものの、これまでに他の映画評論などで言われている内容と大差はなく、むしろ上記の3人がかたるロメロ、ゾンビについて興味がある方には興味深い内容だろう。

「アナザーストーリーズ」を観たのは久々ですが、相変わらずナレーションパートの演出が駄目ですね。NHKのテンプレートをビジネスライクにはめ込んだ印象で、ナレーションの沢尻エリカに今回のテーマであるゾンビやロメロに対する関心や興味が全くうかがえず、ナレーションパートが挟まる度に興ざめするので参ります。これはナレーターではなく明らかに演出の失敗のように思えるが、自分が観たどの会も同じような演出なのでこれがテンプレートなのでしょう。ここまでテーマに対する興味や熱意が感じられない演出というのもある意味すごいものだが。

また、ゾンビと言えばブードゥー信仰を想起するのだが、番組では「ハイチの土着信仰」と説明して「ブードゥー」の単語を一切使わなかったのだが、これは何かNHKのポリシーに引っかかるのだろうか?細かい点だが少々気になった。