エルサレムへのアメリカ大使館移転は妙手?悪手?

BS1で「映像の世紀プレミアム」が再放送中ですね。

www4.nhk.or.jp

本日の放送分を観ていたところ、先日書評を書いた『ロスチャイルド~富と権力の物語』にも登場したロスチャイルド家エドモン、モリス、ギーの映像が紹介されていました。もともとロスチャイルド家事態はシオニズムに対してそれほど熱心ではなかったのですが、第2次世界大戦の災禍を経て、積極姿勢に転じたことも述べられていましたね。

中東に関しては先日『乳牛たちのインティファーダ』を取り上げもしたのですが、つい先日エルサレムへのアメリカ大使館移転が報じられ、事態が急転しており、第3次となるインティファーダが起こりかねない状況のようです。

中東、特にイスラエル問題は問題が複雑なので安易に述べることは難しいのですが、今回のアメリカ(というよりトランプ大統領)の決断は果たしてイスラエルにとって妙手と言えるのでしょうか?短期的に現在のネタニヤフ政権にとっての政権浮揚効果は確かにあるでしょう。イスラエル国民のプライドを充足する点もあるでしょう。しかし中東イスラム諸国の強い反発状況を見ると長期的には悪手となりかねません。オスロ合意を実現した1990年代と異なり、アメリカの国際的地位が相対的に低くなっている現在、アメリカが中東で果たせる役割は限られています。シリアの状況を見れば歴然です。仮に今後問題が深刻化した場合、アメリカ一国の支持では問題を打開できなくなる状況が起こることを想定すると、今回の決断は中東問題においてアメリカとイスラエルのみが孤立することになりかねず、イスラエルの国家存亡の危機にもなりかねないものとなる可能性があります。この点については今後安保理で問題を協議するらしいので、それをよく見ておきたいと思います。

それにしてもアメリカの政界は長期的にこの問題をどう扱うのでしょうか。「あのトランプがやってしまったことだから」と次の大統領で梯子を外すのか、常識はずれの現大統領の行動を奇貨として既成事実化を図るのか。どちらも理由はつけやすいので次の大統領は状況に応じて選択することになりそうですね。