BS1スペシャル「ワルシャワ蜂起 葬られた真実 カラーでよみがえる自由への闘い」:テクノロジーによるアーカイブへの貢献

11月30日放送BS1スペシャル『ワルシャワ蜂起 葬られた真実 カラーでよみがえる自由への闘い』を視聴しました。

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第2次世界大戦のものに限らず、白黒フィルムで撮影された過去の映像を、カラー化してデジタルアーカイブとする活動は近年活発に進められています。

番組では1944年にナチス・ドイツ占領下のポーランドで行われたワルシャワ蜂起において、ポーランド側で撮影された映像をカラー化したものが紹介されています。

個人的な感想ではありますが、カラー化の効果というのは大きいですね。白黒の映像がカラー化することで、映像の中の時代が何十年も後の時代のもののように感じられます。白黒の映像では「歴史の1ページ」と感じる光景が、彩色を施されることで現代におけるリアリティを新たに獲得することに成功しています。蜂起直後のワルシャワ市民、炎上する建物、蜂起後の焼け野原となったワルシャワ市街、どれも70年近く前の映像とは思えないものです。戦後70年が過ぎ、当時を知る人々が少なくなる中で、このようなアーカイブの作成に対するテクノロジーの重要性は今後ますます高まることになるのでしょう。

また、番組の中では、映像にも登場する当時のポーランド国軍兵士3名のその後が本人の証言と合わせて紹介されています。中でも当時17歳で国軍兵士となったヴァンダ・トラフチカさんの話が印象に残ります。

ワルシャワ蜂起は大きな犠牲を出しながら、最終的にドイツへの降伏で幕を閉じます。その後社会主義陣営下のポーランドでは、ワルシャワ蜂起自体が否定され、生存者は自由主義者として弾圧をうけ、蜂起での犠牲者も身元確認もされぬまま、その遺体はまとめて広場に埋められることになり、ワルシャワ蜂起は敗北と否定という2重の意味で悲劇の道をたどることになります。そのような時代の中で、戦後当時の上官から部隊の犠牲者14名の遺体を確認し、墓に彼らの墓碑銘を刻むことを命令された彼女は、数十年にわたる長年の辛苦を経て、遂に兵士たちの名が刻まれた墓碑を建てることを実現します。番組の最後では、ワルシャワ蜂起70年後の式典において、ポーランド大統領を墓碑に案内し、14名の名前を読み上げるトラフチカさんの姿があります。まるで映画の1シーンのようでいて、ドラマというにはあまりにも重すぎるその光景にはただただ言葉を失うばかりです。

テクノロジーが実現したアーカイブと、歴史の語り部達の証言が融合した番組です。