第7の封印:キリスト教世界では普遍的?

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評価:3(5点満点)

総評:

イングマール・ベルイマン監督の1956年公開作品。

十字軍の遠征から10年振りに帰国した騎士アントニウス。従者とハンスと共に故郷へ赴く途上死神に出会う。自らの死を告げる死神に対し、アントニウスはチェスの勝負を申し込む。勝負は長引き旅は続く。旅芸人、鍛冶屋の夫婦などを一行に加えたアントニウスの前には疫病に侵された祖国、絶望する人々が広がる。神は実在するのか?悪魔にすら問わんとするアントニウス。やがて故郷の城にたどり着く正にその直前、死神とのチェスに決着がつく,,,

以上が粗筋です。なるほどわからん(笑)。『第7の封印』?死神とのチェス?静まれ我の右手、のような厨二病的な関心で見てはいけない作品です。ベルイマン監督の作品の中でも難解と言われる部類の本作ですが、そもそもこの信仰と神の実在の追及というテーマ自体が非キリスト者である自分には縁遠いため、アントニウスに自己投影できないですね。神への信仰と、その一方で眼前に広がる世の不条理。神への実在への疑いとそこから生まれる問い、というのは旧約聖書の昔から存在するテーマですので、文化として聖書が根付くキリスト教圏ではおそらく普遍的なものなのだと思われるのですが。

所謂娯楽作品ではないので、観て楽しいという作品ではありません。文学や絵画のように嗜む映画、というべきでしょうか。映画というものが、娯楽だけではない一面を持つことを示す一つの例と言えるでしょう。これもまた映画。アクションや感動作も良いですが、たまには本作のような作品を見るのも良いものです。

ところで本作に登場する騎士アントニウスとその従者ハンスですが、主従でありながらその考えは対照的です。アントニウスは絶望しながらも信仰を捨てられず、神を求めて彷徨しますが、ハンスはそんな主人も含めてこの世界にも神にも諦観した気持ちを抱き、皮肉な眼差しを向けています。ベルイマン自身の立ち位置はどちらなのでしょう。ハンスなかなか良い男なのですよ。酸いも甘いも嚙み分けつつ、皮肉屋ながらも主人を支えていて。それだけにあのラストは納得いかないなあ。