『Wofenstein:The Old Blood』:旧作へのオマージュが感じられる前日譚

f:id:Martin-A:20190508131822j:plain

『Wofenstein:The Old Blood』を難易度ノーマルでクリア。所要時間は10時間ほど。

シナリオは前作『Wofenstein:The New Order』の前日譚にあたり、本作のエンディングがそのままThe New Orderの冒頭に繋がる流れになっている。とは言うものの、前作へつながる伏線であるとか、未解決の謎が明らかになるという訳でもなく繋がりは薄いので、前作を未プレイでも問題なく進められるだろう。

前作と比較してChapter数が半分、ボリュームが体感で3分の2といったところで、かなりコンパクトにまとまった印象だが、各Chapterのボリュームが前作より大きいため、それほど短い、という気はしなかった。

f:id:Martin-A:20190508132308j:plain

居眠りで登場する主人公...

前作に比較して主人公であるブラスコヴィッチのモノローグが大幅に減っているので、よりプレイに集中できる造りになっている。ブラスコヴィッチのキャラクターについては前作で深掘りできているので、前日譚であり、外伝的な意味合いが強い本作ではこの演出が正解だろう。

f:id:Martin-A:20190508132600j:plain

本作ではその舞台の多くがシリーズタイトルでもあるWolfenstein城となっており、作品の前半はその城からの脱出がメインミッションとなる。これはシリーズの原点である『Catsle Wolfenstein』へのセルフ・オマージュと見て良いだろう。IP名に冠せられながら、前作では触れられることが無かったWolfenstein城の登場は、旧作からのファンに向けた制作陣からの贈り物と言ったところだ。

f:id:Martin-A:20190508134920j:plain

f:id:Martin-A:20190508133023j:plain

敵役は前作同様下種揃いだが、少々インパクト弱め

前作の発表から間をおかずにリリースされたこともあり、ゲームシステムにほとんど変更はない。前作との比較で言えば、本作初登場の武器があるくらいだろうか。どれも単発の威力が高めで使い勝手が良く、陳腐化を感じさせないためのアクセントとしては十分に機能している。(あと近接武器から登壁用具、万能マスターキーと八面六臂の活躍を見せるパイプ先生の有能さよ)

f:id:Martin-A:20190508133542j:plain

ステージ構成もWolfenstein城以外にも、中盤以降はケーブルカー、波止場、墓地など前作よりも開けた空間ステージが多く、前作とはまた異なる立ち回りを楽しむことが出来る。このあたり、前作のシステムを使いまわすだけに終わらず、プレイヤーに飽きを生じさせない手立てを打つ点は流石に老舗シリーズの貫禄と言うべきか。

f:id:Martin-A:20190508133924j:plain

後半はゾンビが登場したり、インディー・ジョーンズ張りの超古代文明が登場したりとこのあたりも旧作へのオマージュが見て取れる。ゾンビ相手の戦闘は前作にはない要素なのでなかなか楽しめる。なにせステルスの必要が無いので、本作には珍しく出鼻からアサルトライフルを撃ちまくり、圧倒的火力で蹂躙できる。

f:id:Martin-A:20190508134205j:plain

また、各Chapterの最後にはボスキャラなりWave式なり締めを飾る戦闘があり、意外にあっさりと各Chapterが終了する前作に比べてメリハリが効いている。Chapter数が少ないからこその仕様ともいえるが、シナリオよりもプレイに重点を置いた造りが良くわかる構成だ。

f:id:Martin-A:20190508134416j:plain

DLCと言うにはボリュームが多く、ナンバリングタイトルとしてはボリューム不足。正に外伝と呼ぶにふさわしい内容。物語やキャラクターの深掘りは期待できないが、前作のプレイを楽しめたプレイヤーであれば間違いなく本作も楽しめるだろう。

f:id:Martin-A:20190508134719j:plain

 

『Wolfenstein:The New Order』 ノット・ア・ヒーロー

f:id:Martin-A:20190504205228j:plain

『Wolfenstein:The New Order』をクリア。所要時間は19時間ほど。難易度はノーマル。同じ一本道FPSシューターである『Metro』シリーズや『RAGE』よりやや時間がかかったのは、同じ難易度ノーマルでも本作のほうが初見難易度が高かったからだ。中々にやり応えのある作品だった。

舞台はWWⅡでナチスが勝利。アメリカをはじめとした自由主義諸国が占領された架空の歴史。終戦間際の作戦で重傷を負い、十数年の昏睡から目覚めたアメリカ軍諜報員B・J・ブラスコビッチがレジスタンスと共にナチスへ戦いを挑む物語だ。

外連味に溢れた世界観、シビアだが練られたゲーム・デザイン

本作でまず目を引くはその世界観だ。ナチスに占領された1960年。街に溢れる鍵十字。軍事ロボットやレーザー兵器、果ては月面基地など、明らかに60年代にそぐわぬオーバー・テクノロジー。それでいて巨大な演算処理機やCRTが配置されたレトロ・フューチャーな光景。それが寧ろ40~50年代的な風俗に溶け込んでいる。”もしナチスがWWⅡで勝っていたら?”というテーマは歴史改変モノでは定番のテーマの一つだが、そのテンプレートをかなり高い品質で映像化することに成功している。

作品の舞台も刑務所、収容所、軍事基地などFPSのご定番から、先に挙げた月面基地、海底の秘密基地まで多種多様。世界観や舞台装置は荒唐無稽と言っても過言ではない。

f:id:Martin-A:20190504212450j:plain

一方でゲーム・デザインはなかなかにシビアだ。本作はFPSとしては実にバランスがとれており、ステルスあり、トリガーハッピーな銃撃戦あり、巨大ボスとの戦闘あり、とプレイヤーを飽きさせない。全体的に楽に進めたいのであれば、ステルス進行がおすすめだが、ひたすら撃ちまくってもクリアは可能。プレイヤーの嗜好に合わせてプレイ・スタイルを選べる戦術的な許容度は大きいと言える。しかし、どのようなスタイルでプレイするにしても、考えなしの場当たり的なプレイでクリアすることは難しい。マップや敵の位置、そして弾薬や回復薬の位置を把握して、適切な立ち回りが必要とされる。何度もゲームオーバーを繰り返したミッションが、立ち回りを変えただけであっさりクリアできた、と言うことも多い。個人的な感触だが、本作ではエイムの正確さよりは、適切な立ち回りが重要だと思う。

プレイ内容についてはおおむね満足でやり応えがある。敢えて言うならばスナイピングの比重が低い点だろうか?本作は基本的のどのステージも空間が限られているので、スナイピング・スタイルのプレイには向かない。スナイプ嗜好のプレイヤーにはあまり訴求するものが無いかもしれない。

f:id:Martin-A:20190504213759j:plain

不思議な主人公、B・J・ブラスコビッチ

本作のシナリオについては、ナチスを敵役とする歴史改変ものとしてはありきたりな内容と言える。ブラスコビッチをはじめとするレジスタンスの作戦は局地戦の繰り返しであり、これが戦略的な勝利につながるとは考えにくいもので、その内容は良く言っても小中学生向けのSFレベルだ。基本的にゲームデザインありきで作られたシナリオなのだろう。妥当性のある積み重ねでレジスタンスの勝利を描くような意図はそこには感じられない。

f:id:Martin-A:20190504222751j:plain

悪役のキャラクターも分かりやすいことこの上ない。はっきり言えば”完全無欠の下種野郎”だ。昨今なかなか見られないほどに清々しい下種っぷりは寧ろ好感が持てるくらいだ。実はいい人でした、とか過去のトラウマが彼を変えてしまった、とかいうドラマは本作の悪役には一切用意されていない。見事なまでに記号化された悪役と言えるだろう。

f:id:Martin-A:20190504222814j:plain

本作のシナリオ面で目を引くのは、主人公であるブラスコビッチのキャラクターだ。

f:id:Martin-A:20190504214858j:plain

このブラスコビッチ、外面と内面の乖離が中々に激しい。見た目はガチムチマッチョ、ケツアゴ、マリーン・カットといかにもアメリカ軍人な見た目をしているのだが、中身は実に繊細、と言うか鬱屈しているというか、スカッとしていないのだ。

本作はやたらとブラスコビッチのモノローグが多いことが特徴だが、そのほとんどが巨大な悪に立ち向かう、と言った勇ましい内容ではなく、過去のトラウマを吐露したり、恋人のアーニャを思ったりと、やたらと個人的なのが面白い。ゲーム内ではステルスに銃撃に八面六臂な活躍を見せながら、考えていることはペシミスティックかつセンチメンタル。思うに本作におけるブラスコビッチはプレイヤーの投影ではない。基本的に主人公₌プレイヤーの投影となるゲームでは、プレイヤーに没入感を高めるための手立てを駆使する。名前をなくし、個性をなくし、セリフをなくす。本作の手法はその逆だ。ブラスコビッチという個人を確立することで、プレイヤーとブラスコビッチは別の人格となる。これはヒロイック・ファンタジーでは当たり前の手法だが、寧ろこれらの作品ではヒーローへの憧憬を高める手法だ。例えば『Witcher3:Wildhunt』は、主人公ゲラルトの英雄譚であり、プレイヤーは彼の活躍を見届けるのがその役割だ。ダンディリオンが狂言回しを務めていることからも明らかで、プレイヤーはゲラルトの活躍に胸躍らせることが既に役割として期待されているのである。

f:id:Martin-A:20190504222836j:plain

ところが本作の主人公であるブラスコビッチは、記号的なヒーロー像とは一線を画している。行動そのものは紛れもないヒーローなのだが、そのモノローグから伺える内面が邪魔をする。作中でも口数が少なく、表情に乏しい彼の内面を、レジスタンスの仲間や、おそらくは恋人のアーニャすら理解していないかもしれない。多用されるモノローグはその孤独感を引き立てる。また、日本語版の声優である中田譲二さんの演技がまた秀逸だ。どうにも複雑なブラスコビッチのキャラクターを見事に演じている。この憧憬の対象とは外れたキャラクターを、ブラスコビッチはなぜ与えられたのだろうか?

外連味のある世界観や、浅いシナリオ、荒唐無稽な舞台。完全無欠の悪役。いずれも”ガキ向け”とのレッテルを本作に貼るに十分な要素だ。ここに分かりやすいヒーロー像を主人公に据えれば完璧だ。だが本作は、主人公ブラスコビッチのとてもヒーローとは言い難い内面とその演出、そしてシビアなゲームデザインそのものが本作にビターな味わいを加えることに成功している。

外連味のある世界観に小中学生向けと言っても良いテンプレートなシナリオ。一方でシビアなゲームデザインとおよそ低年齢向けとは言い難い主人公。4つの要素が不思議なバランスを取って成立している不思議な作品と言えるだろう。

f:id:Martin-A:20190504223005j:plain

 

『Fallout:New Vegas』アポカリプス・ノスタルジア

f:id:Martin-A:20190426092401j:plain

Fallout:New Vegas』をクリア。4つのエンディングのうち3つを達成で約60時間。サブクエストの達成率はおそらく4割程度なので、流石のボリュームだ。自分は本作を遊ぶ前に、既に『Fallout4』をプレイ済だったが、その比較を交えて感想を書いてみたい。

古さは否めないが、それでも十分に楽しめるプレイ感

「スッカスカやなっ!』。キャラメイクを完了し、オープニングムービーを終えて、最初にウェイストランドへ踏み出した時の感想だ。なんというか、空間の広さに比較して、建物や木々などの量が乏しく、非常に空虚に感じた。

f:id:Martin-A:20190426093743j:plain

f:id:Martin-A:20190426093759j:plain

上が『FO:NV』。下が『FO4』

張られているテクスチャやオブジェクトの量も質も段違いだ。キャラメイクにしても雲泥の差と言って良い。

f:id:Martin-A:20190426094001j:plain

f:id:Martin-A:20190426094143j:plain

上が『FO:NV』。下が『FO4』

プレイする際の操作性にしても、『4』に比べて本作はかなりもっさりしているし、ダッシュが出来ない等かなり劣っていることは否めない。本作のほうが前なのだから当然か。寧ろ5年程度でこれだけゲームと言うのは進化するのだな、と感心する。もともとグラフィックやモーションという要素は『Fallout』シリーズでは副次的なものなので、正直気になったのは最初の1時間程度だろう。

ゲームシステムについてはほとんど違いが無い。本作から『Fallout4』で加えられたシステム面での要素は拠点のクラフト・防衛程度ではないだろうか。そう思えるくらい違いを感じなかった。『Fallout4』をプレイ済なら違和感なく遊べるだろう。

そして肝心なことだが、やはり面白い。他の記事でも書いたように、自分にとってオープン・ワールドRPGの楽しみは、”世界を探索する楽しみ”だ。本作の舞台はネバダ州。一面の荒野に煌めく歓楽街が浮かぶ地、モハビ・ウェイストランドだ。

f:id:Martin-A:20190426095632j:plain

f:id:Martin-A:20190426095648j:plain

本作の主人公はウェイストランドの運び屋。訳アリの依頼を受けた際に襲撃されて重傷を負う。回復した主人公は消えた荷物とその理由を探るためにウェイストランドを旅することになる。主人公にウェイストランド探索の理由を与え、複数の勢力との絡み合いながら進行するメインクエストの形式は『Fallout4』と同じ。その探索の途中で様々な地に立ち寄り、人々と交わる中でサブクエストが発生するのだが、探索がてらにサブクエを手掛けているといつまでたっても本筋が進まない。正直探索とサブクエだけでも十分に楽しいので困ってしまう。とりあえずクリアしないと感想を書く気になれないのでいったんクリアしたのだが、やはり本シリーズの楽しみは世界の探索そのものにあるな、と再認識した。

f:id:Martin-A:20190426111528j:plain

『Fallout4』との比較。そしてシリーズの方向性

とはいえ『Fallout4』と比べ、本作が優れている点も存在する。1点目は各勢力とプレイヤーの関係性がより複雑な点だ。『4』でも各勢力との関係性により、友好的にも敵対的にもなる要素はあったが、本作ではもっと複雑だ。本作ではエンディングに関係する3勢力以外にも、様々な”派閥”が存在しており、それぞれの派閥が3勢力と独自の関係を持っている。そのためプレイヤーと各”派閥”との関係が、3勢力との関係にも影響を及ぼす。それだけでなく、各勢力、派閥は独自の装備が存在し、それを着用しているだけでも関係性に影響を与える。この複雑さは『4』以上の仕様だ。

f:id:Martin-A:20190426111602j:plain

2点目は、エンディングの丁寧さだ。『4』の場合、エンディングは大きく分けて2つだったが、本作の場合4つの分岐が存在している。どの勢力に加担するかにより発生するクエストも変化する。特に加担する勢力により、同じクエストでイベントをを起こす側にも阻止する側にもなりうるなど、エンディングへ至る道程も凝っている。エンディングそのものについても、メインクエストでの選択で4つのエンディングに分かれるだけではなく、サブクエストの進捗状況により、細かく内容が変わるなど、『4』と比較してもその丁寧さが光る。

f:id:Martin-A:20190426111624j:plain

思うに『Fallout4』は『Fallout:New Vegas』の非常にストレートなアップグレードだ。コンセプトもゲームシステムにも大きな変更は加えず、物理エンジンやクライアントの向上に合わせた品質の向上と、その時勢のトレンドを取り込むという、ある意味保守的な取り組みともいえる。それでも『Fallout4』が大成功を収めたのは、おそらく作り手・受け手双方が考える理想の品質に、ようやく到達した作品。それが『Fallout4』だったからなのだろう。一方でそれは品質面で多くのリソースを食われることを意味しており、『FO:NV』から後退したとも思える複雑性やエンディングの丁寧さは、それを取り込むだけのリソースが2015年時点でも足りなかったということなのかもしれない。

f:id:Martin-A:20190426111651j:plain

ならばFalloutシリーズの今後の展望は如何なるものであろうか。グラフィックやモーションなど、環境面での劇的な向上は流石に難しいだろう。本作のように既に確立されたブランドをもつIPの場合、コンセプトやデザインの大幅な変更もリスクがある。一方で、『NV』から『4』で除外された、勢力関係やエンディングの複雑性が、リソース的な理由であるならば、この方面でのアップグレードが取りうる方向性の一つだろう。また、昨年オンライン専用の『Fallout76』が発売されている。その方向性を考えるとプレイ面ではやはりcoop要素の追加あたりが目玉となるのだろう。おそらく次回作はナンバリング・タイトルになると予想されるが、基本このあたりが着地点になるのではないかと考えている。それでは世界観やシナリオについてはどうだろうか。

f:id:Martin-A:20190426111714j:plain

崩壊後の世界に感じるノスタルジー

今回『Fallout:New Vegas』をプレイして感じたのは、なんというか非常に西部劇的だという感覚だ。はっきり言ってしまうと”ローンレンジャー”だ。舞台はポスト・アポカリプスなのだが、そこで繰り広げられるドラマが非常に西部劇的なテンプレートに感じられるのだ。『Fallout4』は西部劇的と言うよりはさらに遡り、ミニッツメンなど独立戦争のモチーフが目立つ。これは本作がネバダ、『4』がボストンを舞台にしていることが理由だろう。ポスト・アポカリプスがコンセプトのシリーズながら、その世界観は新世界と言うよりはノスタルジーを感じさせる造りになっている。これはマッドマックス的な世界観とは異なる独自な路線と言えるだろう。同種のコンセプトにありがちな、崩壊後に全てご破算になった世界でもなく、緩やかに終末を迎えるでもなく、残された者たちが共同体を形成し、再び”開拓”の時代を迎えるあたり実にアメリカらしいと言える。国家としてのアメリカが滅びても、アメリカの精神は滅びず、継承されていく。ポスト・アポカリプスでもアメリカはアメリカなのだ!と、実は結構愛国的なシリーズなのかな、と思わないでもない。

f:id:Martin-A:20190426111751j:plain

『Fallout3』はワシントン。本作はネバダ。『Fallout4』はボストン。いずれもアメリカにとって歴史的、文化的な文脈で重要な都市、地域が舞台になっている。となれば次回作も同様の基準で舞台が選ばれるだろう。

前3作に匹敵するほどに、アメリカ人のノスタルジーに訴求する舞台。そうなると次はやはり南北戦争をテーマに、リッチモンドニューオリンズあたりを舞台にした作品だろうか?南北戦争がテーマとなると相当な意気込みで仕上げてくるだろうと期待できる反面、昨今リー将軍銅像事件などで、政治的に騒がしい地域でもあるので難しいかもしれない。同様の基準で考えると、アメリカのハートランドである中西部プレーンズ地域というもの考えられるが、『Fallout in 大平原の小さな家』と言うのは様にならないことこの上ない。やはりここは南北戦争をテーマに南部地域、と予想しておく。南北戦争Falloutな大規模PvP。なんかちょっと見てみたい気がする。

f:id:Martin-A:20190426112555j:plain

2020年には次回作の情報が出るだろうか?楽しみに待ちたい。

f:id:Martin-A:20190426111806j:plain

 

『Spec Ops:The Line』 ゲームを”楽しむ”ことの本質

f:id:Martin-A:20190414102822j:plain

『Spec Ops:The Line』をクリア。所要時間は6時間ほどなので、小品と言って良い作品だろう。ジャンルはリアル系TPS。SCARやSWAなど、実際に存在する銃を使用し、一方でPerkなどの特殊能力やレーザーなどの超化学も存在しない。

TPSシューターとしてはそれなりの水準を達成していると言えるだろう。個人的にはかなり難しいと感じた。Perkが無く、自然回復以外の回復手段が無いため、結構簡単に死ぬ。ノーマルではクリアできないポイントが多かったため、難易度をイージーに変えたが、それでも結構な頻度で死亡した。正直ノーマル以上の難易度でクリアできたかどうか怪しいと思う。チェックポイントが細かく、大体において死亡した戦闘から再開するのでストレスは少ない。遮蔽物に隠れ、敵を倒しつつ、カバー移動でラインを押し上げるのが戦闘の基本なので、The Divisionなどをプレイした経験があればそれほど苦も無くプレイできるだろう。意外と敵が攻撃を仕掛けてくる範囲が広く、隠れた先が敵に丸見えで正面から銃撃されることもしばしば。周りの状況を見ながら次に進むルートを考えて行動するなど、戦術的な立ち回りも要求されるので、中々にやり応えがあるゲームだった。

f:id:Martin-A:20190414104033j:plain

しかし本作について感想を書くのであれば、書くべき内容はそのプレイ内容ではないだろう。本作はそのシナリオが高く評価されているゲームであり、自分がプレイしたのもそれが目的だ。

本作の舞台はドバイ。史上最大級の砂嵐に襲われ、多くの市民が取り残されている中、その救出に派遣されたアメリカ陸軍第33歩兵大隊が消息を絶つ。プレイヤーはデルタ・フォース隊員ウォーカー大尉として第33部隊の調査、捜索のためドバイの地に降り立つ。

ネタバレを避けるために詳細は省くが、実のところシナリオそのものについてはそれほど楽しめるものではなかった。おそらくそれは製作者の意図通りの反応なのだろう。ドバイに到着したウォーカー(すなわちプレイヤー自身)が味わうのは血と硝煙にまみれた陰惨な戦場だ。そこにカタルシスは存在しない。

f:id:Martin-A:20190414105140j:plain

第33部隊はドバイを占拠し、市民を虐殺しており、ウォーカーは自らが捜索するはずだった部隊を相手にした戦闘を余儀なくされ、その過程で多くの虐殺の痕跡を目にすることになる。

f:id:Martin-A:20190414105400j:plain

何故第33部隊はこのような行為を行っているのか?理由も分からぬままプレイヤーは戦うしかない。本作でプレイヤーは、いわば五里霧中の状態で状況に巻き込まれ、流されるように戦闘を続ける。最後に倒すべきボスキャラや達成すべき目的があるわけでは無い。しかも相手は本来友軍である部隊だ。ゴア表現も含む演出も効果的に、その救いのない状況を掻き立てる。

ここで問われるのは本作をプレイする意味だ。目的もなく、カタルシスもない本作をなぜプレイするのか?

ゲームをプレイする目的は人それぞれだ。楽しむため。カタルシスを得るため。そのストーリーに耽溺するため。ジャンルによっても様々だろう。

本作の制作陣は、「リアル系シューター」というジャンルを”楽しむ”ことそのものに対する一つの問いを投げかけていると感じる。それは「リアル系シューター」の”リアル”とは何か?それは本来”楽しむ”ものなのか?ということだ。シューターにおける!リアル”は言うまでもなく「戦場のリアル」だ。実際に存在する兵器を駆使し、思う存分に弾丸をぶっ放して敵を殲滅する。それが「リアル系シューター」の楽しみであり、面白さだろう。

f:id:Martin-A:20190414110541j:plain

しかし製作者はそこに疑問を投げかける。そもそもリアルな「戦場」は楽しむものではない。そこにあるのは悲惨で陰惨な現実だ。ならば「リアル系」を謳う作品もそうあるべきではないのか?救いのないこの現実を突きつけることもまた、「リアル系」シューターの目的ではないのか?

f:id:Martin-A:20190414111033j:plain

それが本当に製作者の意図であるかは分からない、しかし本作は、TPSシューターとしては標準的な品質であり、シナリオについても評判程の出来の良さを感じられなかったが、そのカタルシスを排除した演出と、そこからうかがえる意図が実に特徴的な作品だった。プレイそのものにこれと言った癖があるわけでは無いが、そのアクの強い演出は人を選ぶだろう。

f:id:Martin-A:20190414111515j:plain

ボリュームは非常に少ない作品だが、重く、濃い作品だ。ただゲームを楽しみたいというプレイヤーには向かない一種の”劇薬”だ。プレイする際にはご用心を。

f:id:Martin-A:20190414111531j:plain

 

オスマン VS ヨーロッパ:コンパクトなトルコ民族史

オスマン VS ヨーロッパ ~<トルコの脅威>とは何だったのか?』

新井政美 著

講談社

地元の図書館で時間を潰していた際に目に入った本。オスマン・トルコ帝国という国は、高校で学ぶ世界史ではヨーロッパ諸国の目線で脅威としての側面を描かれがちであるため、名前程その実像が知られていないのが実情だろう(この点はやはり日本における「世界史」の、西側視点の表れだろうか)。

本書はオスマントルコ帝国のみならず、枠を広げてトルコ民族の歴史を古くは突厥フン族の帝国からその軌跡を辿り、帝国としての一つの頂点であるオスマン・トルコ帝国の興亡を描いたもので、200頁程度の分量でコンパクトにまとめられており、手軽に読むことが出来る。

オスマン・トルコ帝国が13世紀以降、如何にその版図を広げ、勢力を強めていったのか。筆者がその大きな要因として挙げるのは2点。一つはオスマンがトルコ民族という騎馬民族に源流を持ち、その性格を受け継いでいる点。2点目は言うまでもないことだがイスラム王朝であるとの特性だ。

この2点は双方とも、その民族や宗教と言うドグマに政治が強く縛られない点が特徴となる。騎馬民族国家は、先に挙げたフン族突厥のみならず、代表的国家であるモンゴル帝国を含め、巨大な帝国を形成した国家は押しなべてその政治システムが民族の枠にとらわれないことが特徴である。これは、支配層と被支配層の数的構成において、前者が圧倒的に小さいことによる必然だが、いずれの騎馬民族国家においても行政機構における異民族の人材活用に積極的であり、民族的な排他性が非常に薄い。また、歴代のイスラム王朝においても、他宗教に対する施策は本来非常に寛容であり、人頭税さえ払っていれば改宗を強制されることもないことは有名な話だ。この点は同時代に宗派、宗教戦争を繰り広げていたヨーロッパのキリスト教国とは非常に対照的だ。

オスマン帝国においては行政機構のみならず、有名なイェニチェリのように軍事機構においても国家の中枢を占める異教徒の存在が特徴的である。その形成期には、他の騎馬民族国家と同様、テュルクメンと呼ばれる部族組織を基とする騎兵集団が中心であった軍事機構が、絶対王権へと移行するために必要な常備軍の役割をイェニチェリが占めることとなる。つまりヨーロッパに先駆けて事実上の絶対王政が実現した背景に、騎馬民族国家であり、イスラム王朝であるオスマン帝国の性格が見えるということだ。

メフメト2世やスレイマン1世のような著名な皇帝の業績も非常に簡潔に整理されており、世界史の授業で足りない大部分は本書でおおよそ埋められるのではないかと思う。

 

 

数字の国のミステリー:相変わらずの読みやすさ

 

『数字の国のミステリー』

マーカス・デュ・ソートイ著

新潮社

 

イギリスの数学者である著者の3冊目となる、一般向けの数学解説書。解説書、などと書くと敷居が高そうに思えるが、エッセー的な筆致で描かれた本作は普段数学に馴染みがない人々にもさほど抵抗感を受けないのではないだろうか。

ソートイの著書は、『素数の音楽』、『シンメトリーの地図帳』のどちらも既に読んでいるが、相変わらずの読みやすさだ。自分もそうだが、数学や自然科学系の著作と言うものは、専門用語や数式という、分かりやすい壁を、如何にして読者に乗り越えさせるのかについて、著者の力量が問われる。ソートイはこの点について抜群のスキルを有していると言えるだろう。

素数、対称性と言うテーマに絞った前2作と異なり、本作では所謂「ミレニアム懸賞問題」を取り上げ、1問題につき1章を取り上げる形式となっている。

著者の上手さが光るのは、各ミレニアム問題そのものの解説から入るのではなく、それぞれの問題に纏わる、非常に単純、もしくは抽象的な事例やエピソードを、各章の導入として取り上げ、それぞれの問題が扱うテーマについての普遍的な解説につなげている点だろう。そして各章の最後に、当該の章における記述が、いかなる数学的課題(₌ミレニアム問題)に繋がっているのかが説明される。この流れが非常に秀逸で、とかく読み進めるにはハードルが高い”数学”という題材を扱う本としては、群を抜く読みやすさを誇っていると言えるだろう。「”リーマン予想って何を予想しているの?」という質問に端的に回答したいのであれば、とりあえず本書を読んでおけば良いだろう。むろんそれがポアンカレ予想でもP≠NP予想でもよい。ただしこの著者の本の場合、あまりにも読みやすいので、なんとなく”分かったつもり”になってしまうのが困りものだ。とかく読みやすいのは間違いないが、その内容を理解できているかはあくまで読者の素養次第ではあるだろう。ちなみに自分は理解できているという自信はない。

著者はオックスフォードの教授を務める数学者であり、本業はライターではないのだが、非常に達者な書き手だ。数学の裾野を広げるスポークスマンとしては第1人者と言えるだろう。普段数学に興味がない読者こそ、本の幅を広げる意味でも読んで損のない著作であると思う。

 

『Metro Last Light Redux』これは問題作と言っていいのでは?

f:id:Martin-A:20190405130059j:plain

先日感想を投稿した『Metro 2033 Redux』に続き、続編である『Metro Last Light Redux』をクリア。

プレイ時間は10時間程度なので、ほぼ前作と同じ程度のボリューム。基本的にはゲームシステム、シナリオ共に前作からの踏襲であるため、よく言えば安心感があり、悪く言えばマンネリとも言える内容だ。しかし、ある1点において、本作には「問題作」とも言える要素が含まれている。

その点については最後に述べるとして、まずは作品の感想を。

シナリオ感想:前作同様、シナリオとしては凡庸なのだが...

物語としては、前作『Metro 2033』のノーマルエンド後の時間軸から開始される。主人公アルチョムは、前作で行動を共にしたミラー率いるレンジャー部隊に所属している。そこに、以前ミサイル攻撃で滅ぼしたはずのダークワンの生き残りがいることが、旧知のカーンにより知らされる。

f:id:Martin-A:20190405130815j:plain

ダークワン最後の生き残りを見つけるため、再び探索に赴くアルチョム。しかし、その探索の途上、ナチス勢力によりアルチョムは囚われの身となってしまう。こうしてナチス共産主義者、レンジャーによる三つ巴のダークワン争奪戦が始まる...。

シナリオとしては敢えて語るほどの内容ではない。まあ前作の続きとして妥当な内容と言えるだろう。そもそも個人的にはFPSシューターにそれほど物語性を求めてはいないので、ある意味プレイのつけたし程度になれば良いと考えていた。ところが、この凡庸なシナリオの質が、最終的なプレイ観に大きく影響することになるのだから分からないものだ。少なくとも物語にのめりこむほどの内容ではなかった。まずはそのことを記しておく。

プレイ感想:システムは前作踏襲ながら、やり応えを増した

ゲームシステム自体はほぼ前作を踏襲している。乏しい弾薬、手動の発電機、フィルター残量を気にしながらの戦闘など、世紀末的窮乏感の味わいはそのままだ。グラフィックの向上や、新たな武器やアタッチメントの追加はあれど、大きな変更があるわけでは無い。

それでも本作は前作『Metro 2033』に比べて、ゲームプレイそのもののやり応えが大きく増している。

第一に本作では対人戦の比率が高い。前作では弾薬をかっぱぐための舞台装置程度の扱いでしかなかったナチス共産主義勢力を相手とする戦闘が非常に多い。おそらく戦闘の7割近くが対人戦ではないだろうか。ひたすらプレイヤーに対して特攻をかけてくるため、単調となりがちなミュータント相手の戦闘とは異なり、様々な立ち回りが要求される対人戦の増加は個人的な好みにも合う嬉しい変化だ。

f:id:Martin-A:20190405132503j:plain

第二にボス戦の増加。ミュータント相手の戦闘は比率こそ下がったものの、決して添え物扱いとなっていない。前作ではライブラリアン程度であったボスクラスの敵キャラが、本作では増加している。これがちょうどよいアクセントとなり、対人戦、ミュータント戦共に戦闘の単調化をうまく抑制する効果となっていると感じた。

f:id:Martin-A:20190405132938j:plain

第三にフィールドエリアの多様化だ。前作では地下のメトロ、地上のモスクワという、大きく2種類程度であったフィールドエリアは、今回水路あり、沼地あり、広場あり、邸宅ありと、中々にそのバリエーションを増している。前作同様基本的に一本道である本作において、次々とその姿を変えるフィールドの存在もまた、プレイヤーを飽きさせぬことを意図していると思われるが、それはどうやら成功したと言っていいようだ。

総じて本作のプレイに関しては、前作の粗と言うべき部分を開発者が丹念に修正することで、大きくその品質を向上させている。基本システムに大きな変更はなくとも、続編として十分に期待に応える出来だと言っていいだろう。

f:id:Martin-A:20190405133609j:plain

プレイスタイルと直結するエンディング分岐という問題点

さて、ここで冒頭に挙げた問題点について触れておきたい。本作は前作同様のノーマル/トゥルーのマルチエンディングとなっている。前作では、プレイ中NPCとのコミュニケーションにより、「カルマ」と呼ばれるパラメータ値が上下し、クリア時の値によってエンディングが分岐した。今作でも同様のシステムが実装されているが、そのパラメータを上下させる変数がより複雑なものとなっている。

問題なのは、トゥルーエンディングに必要な値を得るための行動として、「敵を(なるべく)殺さない」「主要敵NPC2名を殺さない」「むやみに遺体から弾薬を奪わない」という、ゲームプレイそのものに大きく影響する選択肢が含まれている点だ。

はっきり言ってしまうと、本作では自分のように、FPSシューターをひたすらトリガーハッピーに楽しみたいタイプのプレーヤーは、まずトゥルーエンディングにたどりつかないのだ。真のエンディングにたどり着くためには、ひたすら窮乏に堪え、ステルス戦闘に徹し、憎たらしい相手も殺さない、というプレイに徹しなければならない。自分にとって、これではステルスゲームではなくストレスゲームになってしまう。

そのうえ、ノーマルエンド後に改めてトゥルーを目指そうとすると、かなり前のチャプターからの再開を余儀なくされる。エンディングまでの道のりはノーマル/トゥルーで同じなので、この繰り返しは流石に堪える。しかも再開後はひたすら自分の好みと真逆のプレイが必要となるのだ。プレイヤーの選択により、エンディングが変化するのは良いのだが、それが結果としてプレイスタイルを強制する造りとなっていることは正直いただけない。自分が望むスタイル次第で特定のエンディングにたどり着けない、と言うのは正直欠点と評されても仕方ないだろう。

幸いに、と言うべきなのだろうか。最初に述べたように、本作においてシナリオ自体は凡庸で、それほど見るべき内容はない。そのため、プレイ時にノーマルエンドとなった自分も動画サイトでトゥルーエンドを確認するだけで満足した。これがもっとシナリオ重視の作品で、さらに分岐によって真の最終ステージが解放される、といった構成になっていた場合、実質やり直しとなると言えどもプレイせざるを得ないだろう。その結果、トゥルーにたどり着くためのプレイそのものがストレスとなり、結果としてどのようなエンディングにたどり着いたとしても、それを素直に味わうことが難しくなるだろう。本作は、シナリオの凡庸さゆえにトゥルー目当てに望まぬスタイルでのプレイ再開をする気が起きず、結果としてストレスを感じることなくプレイを終えることが出来た。これはある意味僥倖と言えるだろう。正直本シリーズにおけるエンディング分岐はあまり必然性のある演出とは言い難い。

f:id:Martin-A:20190405140621j:plain

総評:前作に満足したならば買って損はない

本作『Metro Last Light』は、『Metro 2033』の良く出来たアップグレード版と言うべき内容だ。大きな変革は無いが、プレイの質は格段に向上している。問題点はあるが、シナリオの凡庸さゆえに目をつむることが出来る。個人的には2作合わせてお勧めできる作品と言える。

そうなると今年発売された『Metro Exodus』をどうしたものか。最新作はオープンワールドと言うことなので、この一本道ゲームがどのように進化したのか非常に気になる。とはいえ今すぐにでもプレイしたい、というほどではないので、積みゲーを消化しつつ、半額程度のセールになるまで気長に待つことになるだろう。しかし『Metro Exodus』はSteamではなくEpic Game Storeの時限独占なので、プレイするのはしばらく先になりそうだ。(Epicはセールの頻度や割引率が今一つまだ見えないし...)

f:id:Martin-A:20190405140638j:plain