『ダークソウルⅢ』プレイヤーへの信頼から生まれた傑作 ③

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ダークソウルⅢ感想の続き。長々と書いてきたが本稿が最後。

総評の前に前2稿で書きもれた本作の魅力をもう2点記しておく。

オンライン要素と動画サイトとの親和性

最初の稿で軽く触れたが本作にはオンラインでのプレイがある。他のプレイヤーを協力者として召喚する(逆にこちらが協力者となることも可能)だけではなく、敵対者として侵入することも可能だ。友人と協力して攻略することも、世界の見知らぬ誰かにヘルプを依頼することも、見知らぬ誰かの邪魔をすることも可能なこのオンラインでのプレイはYouTubeなどの動画サイトにも多く投稿されており、その世界観にそぐわぬコミカルな作品が多く、もう一つの楽しみ方を示していると言える。

また、本作は所謂攻略動画も多く投稿されており、自分もさんざん世話になったが、見ていて面白いのは初見組の攻略動画だ。プレイ前と後で印象がガラッと変わる。「なんでそのタイミングでエスト飲んじゃうかな~』とか思っていたら、自分も似たようなことをしている。そんなあるあるが楽しい。

個人的に好きな動画を2つほど紹介しておく。


カタリナへの愛に溢れた協力プレイシリーズ。ゆっくりボイスとタマネギの相性が良すぎて困る。


侵入先で出会った野生の変態ミミック2匹と優しいホストさん一行の物語。侵入動画で一番笑えた。多分世界中でこんなことが起きてる。

キャラビルドによる多様なプレイ感

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自分のキャラ。ダンディーなヒゲが特徴。兜で見えないが髪型はツインテール

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ジークバルトと祝杯。この頃はファランの不死隊コスでプレイしていた。

本作は長時間周回プレイを重ねるプレイヤーが多いことも特徴だが、それを支える要素がキャラビルドだ。各種のステータスを振り分けることで、使用できる武器や魔法の類が大きく変わるため、作成したキャラにより異なるプレイスタイルが楽しめる。剣や斧主体で戦う近接型と、魔法主体で戦う遠距離型では当然攻略のスタイルも異なる。1週目とは異なるスタイルで次の周回を行うことで、同じゲームでも異なるプレイ感を得ることが出来ることは、間違いなく飽きずに長時間のプレイ時間を重ねる要因の一つだろう。

総評:ユーザへの信頼に裏付けられた”深い”作品

 

本編をクリアしての感想だが、アクションRPGとしての本作は「広がりと深さを兼ね備えた作品」と言える。実のところ、この評価と反して本作のマップは決して広いわけでは無い。アクションRPGとしては狭いほうではないが、所謂オープンワールド型のRPGと比べるとそのマップの規模は比べるまでもない。

その一方でオープンワールド型の作品では味わえない深さと広がりが本作にある。プレイ感で言えば、うかつな立ち回りが死を意味し、常にプレイに慎重さと緊張を強いる本作は、それがエリアの長さ、広さをプレイヤーに実感させるものとなっている。「世界を自由に周遊することがプレイの楽しみ」であるオープンワールドとは真逆の発想だ。マップそのものにも工夫が凝らされ、プレイ中「こんなところにも行けるのか!」と言う場面にしばしば出くわした。この驚きも広さを感じさせる要因だ。余談だが、オープンワールドを謳う作品でしばしば不満に思うのが、「思ったところに必ずしも行けない」と言う点だ。例えば昨年プレイした『Destiny2』は各ステージのデザインが非常に魅力的だったが、意外とプレイでは行けないエリアも多いことが不満だった。オープンワールドの場合、とりあえず世界の端に行きたい、あの崖の先に立ってみたいと思うのだが、ことごとく行くことが出来ず興ざめした。本作の場合むしろ思ってもみなかった場所に行ける驚きが逆に世界の広がりを感じさせる仕様になっている。

また、感想でも書いたように背景となる設定が膨大であり、その設定を踏まえたキャラクターやマップのデザインなど、限られた空間に詰め込まれた情報が膨大なのだ。

つまり物理的には限られたエリアの中で、深さや広がりをプレイヤーに感じさせるための仕掛けや背景が充実した、とにかく密度の濃い作品なのだ。プレイヤーは製作者の用意した濃すぎるほどの密度に飛び込み、溺れ、そして堪能することになるだろう。ここまで方法論がオープンワールドとは真逆の作品がこれほどの支持を受けるというのはやはり本作の質が図抜けているからだ。

良くも悪くも本作はライトゲーマー向きの作品ではない。任天堂的な、所謂「間口を広げる」作品ではなく、初心者お断り。それなりのゲーム好きな人々を対象にしたものだ。この作品は挑戦的でありながら、同時にプレイヤーへの確かな信頼がある。

まずこの難しさでありながら、難易度の設定が無い。難易度イージーなど存在しないのだ。ライトであれヘヴィーであれ、全てのプレイヤーは同じ難易度に挑まなければならない。そしてその難解で情報の少ない物語の語り口だ。先述したように、これは受け手に考察と創造の余地を与える手法だが、とかく説明過剰な近年の創作傾向とは真逆のコンセプトだ。いずれもリスクをはらんだ方針だが、それを支えたのがプレイヤーへの信頼だろう。「こんなゲーム、こんな作品を求める人がいるはずだ」その信頼なしにこんな明確でありながらリスクの大きい作品を作り上げることが出来るとは思えない。

本作はプレイヤーへの信頼が作り上げ、プレイヤーもまた存分にその信頼に答えた幸福な成功例と言えるだろう。

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自分もようやく1週目の世界の旅を終えたばかりだ。DLCに、2週目の世界に。まだまだこの世界深さと広がりを求めて探索の旅を続けることになるだろう。