『Metro 2033 Redux』 小品だがリアル感溢れる世紀末FPS

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『Metro 2033 Redux』をクリア。最近最新作である『Metro Exodus』が発売されたから、という訳でもないのだが、もともと興味はあった作品だ。Steam版では日本語対応されていないのがネックでこれまで避けてきたが、昨年秋に有志による日本語Modが公開されたので、セール時に購入した。Modの適用も非常に簡単で、一部未翻訳な部分も存在したが、プレイの支障にはならなかった。

ノーマルエンドでのクリアで、要した時間は10時間ほど。思っていたより短いという印象だ。同じシューター系FPSの所要時間では、

『Borderlands2』:80時間

S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL』:41時間

Farcry3』:40時間

『RAGE』:15時間

といった所なので、類似の作品と比較してもかなりボリュームの少ない作品と言える。

まあ上に挙げた作品のうち、『RAGE』以外の3作はメインシナリオ以外にサブクエストが多く、それがボリュームを押し上げているところがあるので、一概に本作が小規模とも言えないだろう。ちなみに本作には所謂サブクエストは存在せず、オープンワールドですらないため、プレイ開始からひたすら一本道でシナリオを辿っていくことになる。

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もっともプレイ時間の長短と、作品の満足度は全く別の話だ。本作についてはクリアまでのプレイ時間こそ短いものの、なかなかやり応えのある作品だった。

まず雰囲気のある作品だ。本作の舞台は核戦争後のロシア。いわゆるポストアポカリプス系の作品だ。地上は核の冬に覆われ、人々は地下鉄の駅に避難し、そこを生活拠点として生きながらえている。地上も地下もミュータントが徘徊し、人類も共産主義ナチスに分かれて相変わらず戦いあっている、そんな世界だ。

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本作は2005年発売だが、グラフィックはなかなか高水準で、匂いや喧噪が伝わってくるようなメトロや、荒涼とした廃墟と化したモスクワの描写は、プレイの雰囲気を盛り上げるに十分だ。廃墟やポストアポカリプスの雰囲気を楽しむ向きには格好の作品だろう。

プレイについての感想としては、本作の敵はモンスター系(ミュータント)とヒューマン系(アカとナチ)がそれぞれ半々といった所。このバランスは意外に無いような気がする。ヒューマン系との戦闘でかっぱいだ弾薬を、モンスター系との戦闘で消費することの繰り返しだ。なので、弾薬の消費には結構気を遣うゲームだと思う。実際にはクリア時にかなりのストックを残すことになったが、序盤の2章くらいまではとにかく弾薬が乏しく、ある意味リアルな世紀末的窮乏プレイを強いられることになるだろう。

また、地上エリアでは定期的にフィルターの交換が必要なガスマスクが必須で、そのストックにも気をまわしたり、ヘッドライトやナイトスコープの電源となる発電機を定期的に手動で回したりと、面倒ながらも没入感を高めるギミックも悪くない。このあたりを作品の個性と見るか、余計な作業と見るかで本作の評価は異なるだろう。自分は前者だ。本作が小品ながら傑作と賞されているのは、やはり雰囲気やそのプレイ感に本作ならではの個性が存在するからだろう。

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プレイ済の作品で、ゲームプレイに関するコンセプトが近い『RAGE』と比較すると、その個性が際立つ。正直自分は『RAGE』にそれほどゲームとしての個性を感じなかった。クリア後に大した余韻も感じず、おそらく2度とプレイすることもないだろう。その原因の一つだが、同じポストアポカリプスの世界観を描きながらも、『RAGE』のそれは既視感が強すぎるのだ。要するにアニメ、マンガ、ハリウッド映画などで散々見飽きた世界。なんだかポストアポカリプスをテーマにしたアトラクションで遊んでいるような感覚で、なんと言うか切実さに欠ける。本作におけるメトロやモスクワの描写や、窮乏感を掻き立てるギミックは、確実に作品の雰囲気や没入感に貢献していると思う。本作は2005年、『RAGE』は2010年の作品だが、正直本作のほうが雰囲気もプレイ感も圧勝している。

もう一つ言っておくべきが、やはり『S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL』との類似だろう。どちらも旧ソ連圏を舞台にしたポストアポカリプス系のFPSシューターで、アノマリーと呼ばれる怪現象や、ストーカーと呼ばれるスカベンジャーなど、設定の類似点は多い。一部スタッフが重複していることも影響しているだろうが、『S.T.A.K.E.R』プレイ済だとニヤリとする場面も多く、こちらもプレイ済ならばより楽しめるだろう。

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もっともゲームプレイそのものはかなり感覚が異なる。『S.T.A.L.K.E.R. 』がオープンワールドを謳っていることもあり、開けた平地や広大な軍事基地などでの戦闘が多いのに対して、本作は名前の通り地下鉄や廃墟など閉鎖的な空間での戦闘がメインとなる。当然求められる立ち回りや武器も異なるので、両作とも雰囲気は似ているが、プレイ感は全く別物と言っていいだろう。最も同じスタッフが関わっているからか、敵AIの所作が結構似ている。特に『S.T.A.L.K.E.R. 』では敵を見つけるととりあえずぶっ放して角待ちしていると、わらわら敵が寄ってくるのでそこを一網打尽にする方法を良く採っていたが、本作でもヒューマン系の敵には有効で、角や出入り口に死体の山を築くことになったのはちょっと笑えた。また、超知性体的な存在が作品を通して終始示唆され、今一つ理解しがたい結末を迎えるところも両作は良く似ている。この辺りはロシアエンタメの常道なのだろうか?

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続編である『Metro Last Light Redux』も購入済。できれば今年のサマーセールの前までにはクリアしておきたいところだ。

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