『ダークソウル2』 初見こそが真の醍醐味

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DARK SOULSⅡ~SCHOLAR OF THE FIRST SIN』をクリア。所要時間は70時間弱。クリアと言っても本編のみ。DLC攻略前に一旦感想を残しておく。ちなみに『DARK SOULSⅢ』は既にクリア済。3作目をプレイ済のプレイヤーが、前作である2をプレイした感想となる。

 

 

・モーションの差は慣れの問題で気にならない

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本作に批判的な向きからは”モッサリ”と評されるキャラのモーションだが、実際にプレイしたところそれほど気になるものではない。移動や攻撃等の基本動作について、確かにダクソ3と比較して敏捷性にやや劣る部分があるものの、本作の方が古いのだからそれは当然の事で、正直慣れれば気にならない。ダクソ3との比較論で”モッサリ”と評される原因は、寧ろ戦技システムの有無だろう。ダクソ3における戦技システムの存在はモーションと戦闘への躍動感を飛躍的に高める結果となった。ダクソ3のプレイヤーには皆お気に入りの武器と戦技があるだろう。そのため各武器固有の戦技が無い本作について”モッサリ”と評する結果となっているように思える。少なくとも本作の操作感について、プレイの支障となるほどのストレスを感じることは無かった。

・ボス戦の難易度はヌルい

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ダークソウルの華と言えばボス戦。幾多のプレイヤーに立ちはだかり、その心を挫く存在だ。しかしながらダクソ3をクリア済の身から言えば本作のボス戦はかなりヌルいものであると言わざるを得ない。第一印象の記事でも書いたが、その印象は本編クリアまで変わることは無かった。結局本編ボスの大半は初回もしくは2回目で撃破してクリアする結果となった。

ダクソ2と比較すると、ダクソ3のボスはそのスピード感と躍動感が段違いだ。正直なところ2年の差でこれほどの違いが出るのかと驚くほどだ。その差はそのままボス戦の難易度に反映されており、スピード感と敏捷性の向上はより正確で迅速な反応をプレイヤーに要求し、躍動感を増したモーションは演出面での迫力をさらに増大させている。実際ダクソ2の後にダクソ3をプレイした人はボス戦で相当に苦労したのではないのだろうか?そう思わせるほどに2作におけるボス戦の差は大きいと感じる。

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とは言っても本作もダクソ。難易度の差こそあれやはりボス戦は楽しい。ダクソ3にない本作の魅力として、ボスとの再戦が容易なことだ。ダクソ3では一部を除いてボスとの再戦は周回が前提だったが、本作の場合はアイテム”篝火の探究者”を使用することで同一周回での再戦が可能だ。ダクソ3の不満点の一つがここにあっただけに、これは引き継いでほしいシステムだった。

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ちなみに本編で最も苦戦したボスは、”忘却の牢”のボスである”虚ろの衛兵”。この手の複数タイプのボスがただでさえ苦手なのに、それが3体ときた。本作は複数タイプのボスが多いのも特徴だが、何故かこいつ以外はそれほど苦労しなかった。とはいえ10回目程度で撃破できたので、それこそ50回以上死んだダクソ3の”無銘の王”や”闇喰らいのミディール”に匹敵するボスは現れなかった。まだDLCと、本編における真のラスボスが観攻略なので、そちらに期待しておくこととしよう。

・ステージ攻略は数の暴力と豊富なギミック 

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 ダークソウルの”死にゲー”たる所以はボス戦のみではなく、ステージ攻略もまたその難易度を以てプレイヤーに立ちはだかる。ダクソ2もダクソ3同様か、それ以上の難易度のステージが待ち構えていた。おそらくステージ攻略で死んだ回数は本作とダクソ3ではそれほど変わらないと思う。

とはいえその難易度について、本作とダクソ3ではベクトルが異なる。ダクソ3は敵やアイテムの配置を含めたステージデザインがとにかく秀逸で、全ての要素がプレイヤーを殺しにかかっている、正に開発者のセンスと意地の悪さが光る逸品だった。一方で本作のステージ設計はダクソ3の洗練さには及ばない。難易度はどちらかと言えば敵の数で調整されている向きが多く、不用意に歩を進めると中ボスクラスの敵にすら複数に囲まれることも多い。ダークソウルは無双系ではないので、基本的に複数の敵(それがモブであれ)に囲まれると途端に難易度が跳ね上がる。そういう意味では本作のステージ難易度はダクソ3を上回る。ダクソ3がその洗練さ故に一度ステージ内容を把握してしまえばスルーが余裕であるのに対し、本作のマップはそうもいかない。これをやり応えと見るか、周回へのストレスと見るかはプレイヤー次第だろう。

また、本作のステージの特徴はそのギミックの多さだ。全ステージに共通する”ファロスの仕掛け”をはじめ、有名な”土の塔の風車”など個性的なギミックが多数登場する。そのヒントがあまりに少ないのは考え物だが、ステージ攻略に楽しみと華を添える意味で好意的に捉えられる。

総じて本作のステージ攻略について、その難易度はダクソ3と比較しても遜色は無いと言える。一方でその設計ベクトルはかなり異なるので好みによる差は大きいだろう。コツコツ攻略が好きなプレイヤーには本作のデザインが向いていると言えるだろう。

 

・相変わらず素晴らしい演出

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ソウルシリーズの魅力の一つは”滅びの美しさ”だ。ダクソ3では滅びつつある世界が舞台であったように、本作では既に滅亡して久しい王国ドラングレイヴがその舞台となっている。既に王国に陽は落ち、かつての栄華は灰塵と帰し、勇壮な城郭も華麗な神殿も廃墟へと沈んでいる。そんな世界を演出するデザインや音楽は今作でも素晴らしいものとなっている。

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滅亡した王国ドラングレイヴに既に生者は無く、どこへ行くにも出会うのは朽ち果てた廃墟と亡者のみだ。朽ち果てた王城、森に呑まれた城塞、湖に飲み込まれつつある祭壇など、今作の舞台もまた非常に魅力的だ。グラフィックについては当然ダクソ3に比較して時間的な劣後があるとはいえ、本作は本作で素晴らしい。特に本作の祭祀場であるマデューラが良い。常に黄昏に包まれたその情景は、ダクソ3の薄暗い祭祀場とは趣が全く異なる。既に落陽を迎えた王国を旅するプレイヤーの旅立ちにふさわしい舞台と言えるだろう。また、各ステージのマップデザインは総じて箱庭的な印象を受ける。ダクソ3のような広がりと奥行きには乏しいかわりに密度が濃い。これも良い悪いというより好みが別れる点とは言えるだろう。

・3作目と遜色ない十分なボリューム

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本編クリア迄にかかった時間はダクソ3と殆ど変わらない。もっともダクソ3についてはステージ攻略については事前に十分な情報があった一方、一部のボスで死にまくり攻略に時間がかかった。本作の場合は逆で、ステージ攻略については初見であるため時間がかかる一方、ボス戦はほとんど苦労しなかった。攻略サイトなどを参照してプレイする場合はダクソ2の方がボリュームが小さく感じるかもしれないが、それでもARPGとしては十分なボリュームと言えるだろう。本作もこれからDLCに取り掛かり、周回もする予定なので、最終的なプレイ時間は軽く100時間を超えるだろう。まだまだ楽しませてもらえそうだ。

・”世界”を描きつつも閉じたシナリオ

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本作のシナリオは世界に対して閉じている。不死の呪いと”始まりの火”の継承を巡る物語自体は前作とダクソ3との間を繋ぐ時間軸にあり、テーマとしてはやはりこの世界そのものの成り立ちを描くものであると伺える。一方で今作の舞台はドラングレイヴ一国となっている。この世界ではドラングレイヴ₌世界そのものではなく、ルカティエルやバンホルトの話からも世界には他にも多くの国が存在し、多くの生者の存在も推測される。その点がロスリック₌世界であり、世界そのものが滅亡に瀕するダクソ3とは異なる。主人公の目的もあくまで不死の呪い解くことがその目的であり、その過程で火継ぎの継承に巻き込まれる形となっている。果たしてこの火継ぎが本作における世界そのものの存続にかかわるものなのかは明示されない。本作における物語は一つの国、一人の個人の物語に集約されており、それが世界のなり立ちを左右するという点では一昔前のセカイ系的な文脈に近い物語と言えるのかもしれない。それが本作のシナリオをして”閉じている”と評した理由だ。世界そのものの終焉と再生を描いたダクソ3に比べると、本作のシナリオは世界に対して閉じて描かれている分小振りな印象があり、やはりシナリオの出来は最終作であるダクソ3に軍配が上がるだろう。

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・総評

本編をクリアしての感想としては、やはりダークソウルは初見プレイが一番楽しいということだ。前作ということもあり、当然ながら多くの点でダクソ3の後塵を拝する本作だが、ほぼ初見というプレイ条件がそれを補って余りあった。全く未知のマップを篝火を求めて探索する。敵の配置も分からずに恐る恐る歩を進める。何度も何度も敵に倒され、高所から落下し、不死の呪いを繰り返す。その道程の果てにボス霧に辿り着き、ステージをクリアする。この緊張感はやはり初見プレイならではこそだ。もしダクソ3をプレイ済で、本作について全く情報を得ていないのであれば、間違いなくプレイして損はないだろう。ダクソ3を未プレイであればなおさらだ。是非本作をプレイしたうえでダクソ3まで手を伸ばし、本シリーズがどれだけの進化を遂げてきたのか確かめることをお勧めする。

この後はDLC攻略に取り掛かる予定。悪名高いチャレンジルートにも当然挑むことになるが、それもまた楽しみだ。

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