『Banished』 神の視点で”優しくない”村づくり

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『Banished』をプレイ中。プレイ時間は現在15時間を超えたところ。

本作は簡単に言えば”村づくりRTS”。自然の中に放り出された所から始まり、家を建て、食料を集め、道具を作り、自分の村を作り上げるゲームだ。

 

”神”としての村づくり

とはいっても本作は一般的な”村づくりゲーム”と称される作品、例えば『牧場物語』や『Stardew Valley』等とはかなり趣が異なる。これらの作品ではプレイヤーが一人の住民の立場で、いわばボトムアップの視点で村を作り上げるのに対して、本作は神の視点、トップダウンで村を作り上げていく。

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自然の中に僅かな資材とともに佇む人々。プレイヤーは彼らを指示して村を作り上げる。RTSと言いつつもそこに”他国”は存在せず、したがって”戦争”も存在しない。ただ自らの村づくりにのみ専念すれば良い。いわば『Sim City』や『Planet Coaster』の村づくり版と言っても良いのだが、本作は寧ろ”戦争のない『Stronghold』”と言うべき作品であると思う。

 

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争いが無くとも世界は優しくない

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第一にUIやデザイン面において伝統的なRTSのシステムを採用していることも『Stronghold』を想起させる点だが、何よりも本作には所謂”村/町づくりゲーム”にある優しさとか暖かさとか、楽しさといった要素が決定的に欠けているのだ。

神としての采配を誤ると簡単に村人は死ぬ。食料がなくなると飢え死に、燃料がなくなると凍死。最初の1年ですら全滅するのは容易だ。それはもう感情抜きに淡々と人が死んでゆく。自然もこちらの都合を斟酌してくれない。否応なく四季は巡り、冬には当然作物は取れず、飢えと寒さが村を襲う。冬を超え春を迎えても、天候に恵まれずに不作に見舞われることもある。厳しい自然と脆弱な人々を見降ろしながら、黙々と村を作り上げる。RTSとしても村/町づくりゲームとしてもこれ以上ないくらい地味で厳しい雰囲気の作品と言える。

”生活”を作り上げる楽しさ

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本作には戦争のカタルシスもなく、目標もなく、明確な”ゲームクリア”も存在しない。そんな地味なゲームのなにが面白いのかと思うだろう。

確かに人を選ぶ作品であるのは間違いない。本作の魅力はいわば”生活”を作り上げることにある。多くのストラテジー・ゲームにありがちな研究や時代の遷移と言った発展要素は本作にはない。プレイ開始時点で用意された施設のみを使用して村落を作り上げていく。どれだけ規模が大きくなろうともその点は変わらない。要は今そこにいる人々の日常生活を作り上げるゲームなのだが、これが中々に奥が深い。冬に備えて食料や薪を蓄える。人口の増加に合わせて家を増設する。次の春には新しい畑を増やす。交易で家畜を手に入れたら牧場を作ろう。四季のサイクルに合わせて次々にやるべきこと、やりたいことに手を付けていくうちに、気が付くと2,3時間は軽くプレイしている。派手さは無くとも実にやりがいのある作品なのである。

必要なのは”マネージメント”と”ロジスティクス

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本作はそのコンセプトに対する作品の質もすぐれている。”村づくり”といってもそこはRTS、重要なのは”マネージメント”と”ロジスティクス”だ。マネージメントの重要指標はずばり「人口」。本作では人口は勝手に増減できない。家を作り、そこに適齢の男女が存在することでランダムに子供が生まれる。そのため、家屋の増減や各家庭の年齢構成を見誤ると、急激な人口増加で飢饉に悩まされたり、逆に子供が生まれず超高齢化により存亡の際に立たされる羽目になる。ランダムに増減する人口を如何にバランスよく増やしていくことが管理の肝だ。

その人口を支えるためには多くのアセットが必要だ。食料、燃料、道具、衣服、果ては教育や病院。増える人口に合わせて如何にアセットを産み出すリソースを配置するのか。考えるべきはタイミングと場所。人口の増加に合わせて必要な施設を作り、効率性を考慮した配置を行う。正にロジスティクスの分野だ。無計画なリソースの配置はアセットの偏りを産み出し、村の運営を危機にさらすことになる。

自分のプレイでは200人までは順調に増加したが、このあたりから木材や鉄と言った天然資源が不足するようになり、人口が頭打ちとなってしまった。このあたりから村落周辺からの採掘だけでは人口レベルを支えることが出来なくなるので交易など別の手段で資源の獲得を考えなければならなくなる。このあたりが本作の一つの難所なのだろう。

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雰囲気は地味ながらシビアなゲーム性。正にスルメゲーの本領発揮といったところ。人口100人程度なら5~6時間もあれば到達できるので、意外と気軽に楽しめる作品だ。セールの時期なら買っておいて損はない。