『トロピコ1』 プレジデンテは憂鬱

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トロピコ1』のフリーモードをクリア。難易度は60%だったので普通、所要時間は5時間程度(期間は50年)。

都市育成シムの代表的IPの一つである「トロピコ」の初代。発売は2001年なので、もう20年近く前の作品。この頃は既に就職していてゲームにはほとんど触れていなかった時期なので、「トロピコ」についても本作がシリーズ初プレイとなる。

購入したのはSteam版。日本語には対応していないが、有志による日本語Modがあるのでそれを適用してプレイ。

本作の評価については後にして、まずは新米プレジデンテによる50年のトロピコ統治を振り返ってみたい。

1950年:統治開始

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新米プレジデンテによるトロピコ統治の始まり。期間は50年。いくつかの農場と最低限のインフラ、そして多数の掘立小屋と聳え立つプレジデンテ宮殿のコントラストが映える。まずは最低限の住居である飯場を多数建設して住宅幸福度の向上を図る。同時に農場の生産物を単価の高いフルーツや加工の効く煙草に変更。資金繰りのための伐採所も建設。全てはここから始まる。

1957年:最初の選挙を終える。

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最初の選挙が終わった1957年。結果は勿論圧勝である。人口は50人から122人と倍以上に増加。飯場の他にアパート、マンションを1棟ずつ建築するも、未だに掘立小屋が目立つトロピコ。しかし産業は順調に伸びて国庫には十分な資金が貯まりつつある。高校や教会を建設して更なる幸福度の向上を目指す。

1964年:雌伏の60年代

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2回目の選挙が終わった1964年。結果は勿論圧勝である。アパートマンションを増築したおかげで掘立小屋はほぼなくなりつつある。画面外で採掘所や葉巻工場を建設し、工業化に邁進するも、建設スピードの遅さがネックとなり伸び悩む。人口164人。スイス銀行口座にお小遣いを貯め始める。

1971年:プレジデンテ、観光バブルを目論む

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3回目の選挙が終わった1971年。結果は(略)。新たに建設した発電所の効果もあり、国庫の残高は20万ドルを突破。有り余る資金を手にしたプレジデンテ、トロピコ観光立国化計画に手を染める。生活感溢れる宮殿周辺の景観は観光大国トロピコに相応しくないと、反対側の浜辺を観光区画に選定。無謀にもいきなり高級ホテルの建設に着手。人口225人。

1977年:観光大国トロピコのあけぼの

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4回目の選挙が終わった1977年。たかがホテルの建設に何年かかっとる!プレジデンテ激おこである。しかしようやくホテルも完成して念願の観光立国としてトロピコは歩み始める。なお船着き場もビーチもこれから建設。周囲にはホテル以外何もなし。人口304人。

1984年:トロピコに観光バブル到来

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高級ホテルとビーチだけで出発したトロピコの観光立国化計画。周辺に碌な観光地が無いのか発足当初から大当たり!見る見るうちに観光収入も$10000/年を突破!調子に乗って更なる観光開発を目論みホテルやカジノ、高級レストランを建設。まだまだ開発待ちの建物多数。プレジデンテの野望は留まることを知らない。人口360人。選挙には(略)

1990年:プレジデンテ、わが世の春を楽しむ

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観光立国トロピコは大成功!観光収入に加え、従来の農業や工業からの収入も引き続き順調で、国庫の残高は100万ドル目前!任期は残り10年。あと1回選挙が残っているが、ここまでトロピコを発展に導いた偉大なプレジデンテを国民が選ばぬはずはない。豊かな祖国、豊かな国庫、そして豊かなスイス銀行口座残高を見て、笑いが止まらないプレジデンテなのです。人口390人。

1992年:悲劇のトロピコとプレジデンテの憂鬱、そして...

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90年代初頭、観光バブルに沸き立ち我が世の春を謳歌していたトロピコとプレジデンテ。しかし春は短かった。1992年、トロピコを悲劇が襲う。巨大タイフーンの到来により、島の約半分が破壊されてしまった!特に農場が全滅したのがまことに痛い!急激な食糧不足により幸福度が急激に悪化!慌てて農場の再建設を指示するも、残った建物の被害も少なくなく、遅々として復興は進まない。一時400人を軽く超えた人口も329人まで減少。任期は残り8年、選挙は一回。下落の止まらない幸福度を脇目に復興を指揮するプレジデンテの憂鬱は増すばかり。そして迎える2000年、任期最後の年。

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何とかクリア!無事50年の任期を全うする。最後の選挙はかなり危うかったが、ギリギリ持ちこたえることが出来た。まさか最後の最後にタイフーンの直撃を食らうとは完全に予想外。あれが無ければ最高のエンディングだったのだが...。

 

評価:味のある初代トロピコ

最初に言っておくと、やはり20年前のゲームである。現在の都市育成シムと比較すればかなりやれることは少ない。研究によって様々な要素が開放されたりもしないし、時代が進んで建物や乗り物が進化することも無い(そう考えるとAoEって凄い作品だったんだ)。交通網の整備も非常に拙い(そもそも自動車どころか馬車すら登場しない)。最新作の『トロピコ6』については少し動画で見たのだが、本作と比べれば正に雲泥の差である。

しかしそれでも楽しめた。トロピコシリーズそのものが本作で初プレイということもあるだろうが、この幸福度と選挙に全てが懸かるというシステムは独特で楽しい。幸福度によるバフ/デバフや選挙と言った要素は本作と同時代のシムにも無かったわけでは無いが、ここまで核心的な要素として取り込んだことが本シリーズのオリジナリティだろう。トロピコのプレジデンテは独裁者の癖に住民の幸福度に一喜一憂し、常に選挙の結果に怯えなければならず、幾ら尽くしても上がらぬ住民の幸福度にその憂鬱は増すばかり。南国のトロピカルな音楽とグラフィックも相まって実にユーモアがある。雰囲気も含めて名作と評価されるのも納得だ。

もっともゲームバランスについては第1作と言うこともあって粗も多い。とにかく建築のスピードが遅いので、後半になればなるほど資金の使い道が無くなる。唸るような資金が国庫に計上されていても使い道がなく、金庫に死蔵させるしかない。今回のプレイでも見舞われたように、ハリケーンの被害も甚大で、正直あと10年任期が残っていたら詰んだ可能性が高かった。これはちょっとちゃぶ台返しも甚だしい要素にすぎる気がする(たまたま被害が大きかっただけなのだろうか...)。

とは言え20年前という時間が全てを許せる。流石に最新作をプレイした人がわざわざプレイする程ではないが、まだトロピコシリーズを未プレイであるならば折角の機会だ。この味のある初代をプレイするのもありだろう。

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