『ARMORED CORE 4』 カジュアル不要、本気の遊び

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ARMORED CORE 4』ストーリーミッションをクリア。難易度はノーマル。所要時間は13時間。

同シリーズについては初プレイ。結構な有名IPだが、何故かこれまで縁が無かった。今年ダークソウル3にハマったこともあり、フロムソフトウェア関連のコミュニティにアクセスする機会が増えたが、そこでしきりにAC新作、AC新作と語られていることもあり、ならば一つプレイしてみるかと思った次第。

当然のことながらダークソウルとはプレイ感が大きく異なる。ダクソのプレイがリアルな身体感覚を指向したものだとすれば、本作のプレイはその真逆、身体感覚の果てしない拡張だ。プレイヤーは起動兵器であるAC(アーマード・コア)に乗り込み戦場を駆ける。その高速、高機動な操作感覚は癖になりそうな爽快感。更にお気に入りの武器で大量の敵を屠る快楽を加えれば気分はエースパイロットそのものだ。

一方で本作もやはりフロムソフトウェア作品。ただただ爽快で気持ちいいだけの作品ではない。ACの操作には癖があり、慣れには時間が必要だ。それに兵装の操作までを加えたコントローラー設定は複雑で、キー配置を覚えたとしても記憶に操作がついていかない。一応簡単なチュートリアルはあるが、基本的にはミッションをプレイして覚える前提のようだ(自分もしばらくジャンプと肩武器の使用方法が分からず苦労した)。

最初のチャプターをクリアする頃には操作にもかなり慣れてくる。そうなると本作のもう一つの売りであるACのカスタマイズを色々と試すことになる。自分好みの見た目、兵装に換装し、無機質な汎用品を”愛機”に仕立て、新たなミッションに挑む過程がまた楽しい。

しかしその楽しみもつかの間、新たな壁が本作では待ち構えている。”リンクス”戦だ。本作にはおよそ50前後のミッションが存在するが、その多くは実のところACの操作に慣れてさえしまえばそれほど難易度の高いものではない。軽量、中量、重量を問わず好みの機体を使用してクリアできるミッションがほとんどだ(兵装については武器を選ぶミッションは割と多い)。しかし、各チャプターに1~2ミッション含まれているリンクス戦はそうもいかない。”リンクス”とは作中で次世代型ACのパイロットを指す言葉だが、本作ではボス戦的な意味合いでエース級リンクスとの対戦ミッションが用意されているのだが、これが他のミッションと比べてけた違いの難易度なのだ。

まず動きについていけない。他のミッションに配置された固定砲台や鈍重な戦車やヘリ、ノーマルACとは異なり、自分と同じ高速・高機動で動作するリンクスを追うことすら難しく、照準を合わせることもままならない。更に相手の攻撃はやたらと効くのに対してこちらの攻撃が効かない。そもそも弾を当てるのも一苦労といった有様だ。

こうなると自分の好みなど言っていられない。何度も負けながら相手リンクスの特徴を掴み、それに合わせたカスタマイズを探る過程の始まりだ。近接特攻、遠距離射撃、距離を維持した引き撃ち、様々な戦術とそれに合わせた機体を試行錯誤しながらリンクス戦に挑み、遂に相手を撃破した時の達成感は格別だ。それまで全く歯が立たなかったリンクスに、機体のアセンブリを変更しただけであっさりと勝ってしまうこともある。操作や敵キャラの動きに慣れることよりも、敵やミッションの特性に対応したアセンブリを組むことが重要であり、これはまたダクソとは異なるベクトルの難易度だろう。

ダークソウルとアーマードコアフロムソフトウェアを代表する2大IPと言って良いが、そのプレイ感は相当に異なる。一方でどちらもプレイして共通に感じるのは一種の”本気度”だ。どちらの作品も片手間で、あるいはちょっとした時間を潰す用途でのプレイには向いていない。プレイ時間中は心身共にゲームに集中することが求められる、およそカジュアルとはかけ離れたプレイ感である。ディストピア的な世界設定で殺伐とした戦場を描きつつ、極端に説明を排したシナリオがそのプレイ感と相乗効果を生み、ハードな作風に仕上がっている。この会社の開発陣はプレイヤーに、ゲームをカジュアルに楽しむのではなく、本気でのめりこみ、楽しんでもらいたいと考えているのだろう。そう思わせる作風であり、そのある種傲慢とも言える思いに値する品質だ。さすがに今更オンラインに挑戦する気にはならないが、往時のプレイヤーたちが未だに新作を待ち望むだけの理由がある作品だ。この作風を考えると、およそマスなゲーマー層にアピールするとは考えづらいが、新作なりリマスターなり何らかの形で継続することを望みたいシリーズである。